出版社内容情報
ベストセラー作家にして敏腕放送作家。
そして「保守」論客。
作品が、発言が、そしてその存在が、これ程までメディアを賑わせた人物がかつて存在しただろうか。
「憂国の士」と担ぎ上げる者、排外主義者として蛇蝎の如く嫌う者、そして「何となく」その存在に触れた大多数の人々……。
百田尚樹とは、何者か。
著作が「批評」される機会は思いのほか稀であった。
気鋭の批評家、文芸評論家が全作品を徹底的に論じる。
◆目次◆
序章 なぜ百田尚樹を読もうとするのか
第一章 揺籃 『永遠の0』~『プリズム』
第二章 転回 『海賊と呼ばれた男』~『殉愛』
第三章 爛熟 『カエルの楽園』~『夏の騎士』
第四章 自壊 エッセイ・対談
終わりに
あとがき 杉田俊介
◆著者略歴◆
杉田俊介(すぎた しゅんすけ)
1975年生まれ。批評家。すばるクリティーク賞選考委員。
著書に『非モテの品格』(集英社新書)、『無能力批評』(大月書店)、『宮崎駿論』(NHK出版)、『長渕剛論』(毎日新聞出版)、『戦争と虚構』(作品社)など。
藤田直哉(ふじた なおや)
1983年生まれ。文芸評論家。
著書に『新世紀ゾンビ論』(筑摩書房)など。朝日新聞で「ネット方面見聞録」連載中。文化と、科学と、インターネットと、政治とをクロスさせた論評が持ち味。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
164
百田 尚樹は、ほとんどの作品を読んでいる作家です。百田 尚樹の全作品を新進気鋭の評論家がどう読むのか興味があり、読みました。結論から言うと私の評価とほぼ一緒でした。『永遠の0』や『モンスター』他の小説群は評価するものの、『カエルの楽園』や右翼っぽいエッセイ、『殉愛』等の評価はボロクソでした(笑) https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/column/cc/hyakuta_zenbuyomu 2020/09/18
かんがく
15
百田尚樹は読んだことがないし今後も読もうとは思わない作家だが、あれだけ売れて社会に影響力を持っているからにはどういう存在かは知っておきたいと思って読んだ。批評家二人による対談であるが、その批評対象は百田尚樹を越えて、戦後という時代、保守論壇、フェイクニュース、クールジャパン、サブカルチャー、震災、死生観など多岐にわたる。百田の多面性を通して彼の活躍した平成後半の時代を見ることができてなかなか面白い読書体験だった。二人の意見がところどころ合わないのも対談として魅力的。2023/01/18
チェアー
10
極右思想家(行動家)と人気作家。この2つの性格が1人のなかでどう共存しているのか、興味があった。当初、作品も右翼的なものがほとんどなのか(読んでいないので知らない)と思っていたが、小説としてそれなりに面白いものもあると知る。わたしの解釈としては、この作家は「美しいもの」を描きたいのだなと思う。美しい男、美しい女、美しい国、美しい死に方。もちろん彼なりの定義の下においてだけど。最終章の筆者2人の議論は、わたしには難しすぎてさっぱりわかりませんでした。2020/07/26
ぼんきち
6
映画「永遠の0」は観たが、、この作家の著作は絶対読むまいと決めていた。でも作品は書店で幅をきかし、ベストセラーに入る。あぁイヤな時代だという思いを汲むように、そんな作家だから、その作品を「ぜんぶ読んだ」批評家2氏の対談批評。売れる理由と、作品を通して浮かぶ作者の人物像と、作品の拙劣さが、全作品にわたって語られる。「絶対読みたくない」けど「無視もできない」という、中途半端な私みたいな者にはうってつけの一冊。安倍政権の終わる夏に読ませてもらいました。2020/09/16
いとうひろし_
3
『なぜ百田尚樹を読もうとするのか』を知りたくて本書を手にしましたが、残念ながらストンと落ちるような答えは得られませんでしたし、だんだんと読み進めるのが面倒くさくなってきました。著者は百田尚樹の著書をぜんぶ読んだ上で、百田尚樹という人間をああだこうだと深く考察していますが、結局のところ百田尚樹本人と直接接触していないので、言いっ放し、言われっ放しのような感じがします。百田尚樹は生きているんだから、直接本人から取材したり接触した上での本書だったら、もっと良かったのにと思いました。2020/08/19