出版社内容情報
在ドイツ25年の著者ならではの視点で、歴史認識・経済・エネルギー政策などをテーマに日独について論考。ドイツの戦後の歩みを知ることで、日本が今後重視するべき問題を浮き彫りにする1冊。
内容説明
日本とドイツは、物づくり大国・貿易立国として、ともに戦後めざましい復興を遂げた。だが戦後七〇年経った今、日独間には大きな違いが生じている。ドイツは高い競争力を背景にEUを牽引し、欧州のリーダーとなった。一方、日本は競争力を失い、貿易赤字が拡大、周辺国との関係も悪化して、原発事故以降のエネルギー政策も迷走状態にある。本書では、在ドイツ二五年のジャーナリストの視点で、両国の歴史認識・経済・エネルギー政策などを論考。ドイツの戦後の歩みを知ることで日本が今後重視すべき問題を浮き彫りにする。
目次
第1章 イスラム過激派の脅威とドイツ
第2章 ドイツ人はどのように過去と対決しているのか
第3章 歴史リスクを重視するドイツ、軽視する日本
第4章 ドイツ経済の奇跡
第5章 日独エネルギー政策の違い
著者等紹介
熊谷徹[クマガイトオル]
1959年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、NHKに入局。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。『ドイツは過去とどう向き合ってきたか』(高文研)で2007年度平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
もりくに
47
第2次大戦で敗戦国となった日本とドイツは、70余年を経た現在、どのように違うのだろうか?ここ数年のトップの明らかな資質の優劣を勘定に入れても。この本は、長いドイツ生活を送る著者が、2015年、即ち戦後「70年目」に書いたもの。その後、難民問題などがあるが、現在でも基本的に頷ける内容である。著者は現在、共通点より、「違い」の方が多くなっていると言う。それを「歴史認識」、「経済」、「エネルギー政策」で比較している。ドイツでは、「過去との対決」、「社会的市場経済」、「「エコロジーの重視」が基本原則だという。 →2019/07/15
kawa
41
戦争責任の問題をドイツは上手くやって、日本はしくじったということなのだろう。つまるところ、敗戦直後の責任の取り方が自律的か他律的だったかということに帰結するのだろうが、その辺までの詳細分析もお願いしたかったところ。筆者の言うような「長期的な国益を優先して大人の解決手段」をと言われても、今となっては総論賛成だが、相手もいるし地政学的問題もあるので、どこから手をつけるのだろう?良識ある人々のコミュニュケ―ションを切らさずに、各々の国に、優れたリーダーが出現することを目指すということなのだろうな。2021/08/25
Aquarius
30
凄い、新書でこんなに夢中になって読んだのは記憶にない。過去の教訓を活かし成長を遂げ、ユダヤ人の虐殺を数字じゃなく、行為を謝罪したドイツ。一時の首相の座に固執せず未来への道を開くために改革を行ったシュレーダー。現メルケルの嗅覚とドイツ国民の関心は日本と大きく異る。安全性よりも経済性を選ばざるをえない日本の政治。ドイツのライフワークバランスは国が支えていた。日中韓が和解からのアジア共同体の設立、生きている間には実現しないだろうがそんな日を迎えるためにも次の世代が明るく暮らせる日本を作らなければない。2015/08/29
かふ
22
それほど大した本でもなかったが、日本とドイツの戦後を比べてドイツがなぜ発展し続けているかを探る本。まあ、日本はアホな政治家がいるのだから停滞するのは当たり前で政権変える意外道はないと思うのだが。まずドイツが戦時のナチスの戦争犯罪を忘れないように、隣国とも歴史認識を確認しているということ。ドイツは「ナチス」という悪の構造がわかりやすいんだけど、日本は皇軍が悪とは言えなくなっているから。そこの違いだよな。戦争責任がそもそも取れていない。2021/07/20
さきん
14
著者は随分ドイツの肩を持っていると思う。参考になるのは労働生産性が高く、法整備がしっかりしていて、連邦軍を持っていることだが、移民を入れすぎたり、融通のきかない金融政策やいきすぎた平和主義、反ナチ、賠償は過去の歴史観を歪め、正しい判断を妨げる可能性があると思う。もちろん、残虐行為の真実を認め、内省するのは当たり前であるが。2015/10/08