内容説明
著作権は、「作品」という情報を占有するための、最強の制度である。ディジタル化やネット化で情報の海が爆発的に広がり、作品の囲い込みが技術的に難しくなっている状況下、著作権の存在感はますます大きくなっている。世界的にコンテンツ産業の再編が進行している現在、著作物の独占と共有のバランスはどうあるべきか。豊かな芸術文化が育まれる制度とは?さまざまな事例を挙げながら、変りゆく著作権のかたちを第一人者が解説する。
目次
第1章 情報の独占制度
第2章 対立するテクノロジーと著作権
第3章 多次的創作の時代‐カヴァー、アレンジと二十世紀芸術
第4章 PD、オア・ノットPD、それが問題だ‐著作権は何年間守られるべきか
第5章 アーカイヴィングの現在‐電子図書館、番組ライブラリー、フィルムセンター
第6章 変容する著作権‐リフォーム論、DRM、パブリック・ライセンス
第7章 擬似著作権と情報の「囲い込み」
終章 情報の「世界分割」
著者等紹介
福井健策[フクイケンサク]
弁護士・ニューヨーク州弁護士。1991年東京大学法学部卒業、93年弁護士登録(第二東京弁護士会)。米コロンビア大学法学修士課程修了。2003年骨董通り法律事務所For the Artsを設立。専門分野は芸術文化法、著作権法。日本大学藝術学部客員教授、「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」世話人、各審議会・委員会委員を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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えちぜんや よーた
26
私は、自分でブログを運営しています。 また電子書籍も作って、販売したいなと考えております。 今まで私が読んだ著作権関連本は、 「著作権とは何ぞや」 ↓ 「著作権がらみの事件」 ↓ 「裁判所の判例」 という流れで法律の視点から述べられることが多かったのですが、 福井先生は、先にどういう技術があるか?どんな商売をしているかの話を 先に持ってこられるので、非常に読み易かったです(1時間半程度で読めました) 2012/10/03
しろ
10
☆7 わかりやすいし具体的だから著作権を知りたい時にはいいと思う。けっこうそこら中に著作物があって、やろうと思えば裁判だらけになる。複雑だし悩ましい問題だ。特に日本は信頼や暗黙の了解で成り立っているようなものだから、これからの法制度の変革は難しいけど慎重に行わなくてはならない。著作者の気持ちも大切にしなくてはいけないし、情報の共有によるメリットというのも確かにある。ただ大体トラブルになるのは、著作者か利用者に悪意があったり、配慮が足りない場合だと思う。そんな人々がいるからはっきりさせなきゃいけないのか。2010/12/03
ヤギ郎
7
二十一世紀における著作権について示唆的な内容を盛り込んだ新書。あらゆる創作物に対して著作権が発生する。そして、二十一世紀の創作と創作物はインターネットと切り離せない関係にあるように感じる。インターネットがもたらした情報の大量流通により、情報の独占が難しくなった。技術で対抗できることと法制度の実現が求められることがある。書籍や映画は、時に歴史を記録するものであり、アーカイブとして残すことと著作権が衝突する。だれもがクリエイターになれる時代が到来したことにより、著作権も変容する。(2010年出版)2021/10/20
おおかみ
3
表現を扱うがゆえに曖昧にならざるを得ず、しかも複雑な情報化社会にあって非常に厄介なものとなってしまった、著作権など「情報の独占制度」。この難解な制度を分かりやすく、面白く解説した本書の存在は貴重である。数々の事例を交えつつ、通常見落とされがちな擬似著作権などの論点を次々と明らかにしてくれる。2010/03/18
砂
3
非常にわかりやすく、ページ数も丁度いいのだが、かと言って「難しい話はぬきにしましょう」というようなわけでもない。適度に専門的な話を垣間見ることができ、入門書としては最適だと思う。文章も非常に読みやすく、挙げられる例もわかりやすい。私はこの本の前著にあたる『著作権とは何か』を未読だが、是非読んでみようと思った。2010/03/13