内容説明
日本人の美術家として初めて国際的な美術界と市場で成功を収めた藤田嗣治。彼はまた、当時の男性には珍しく、身のまわりのものをことごとく手づくりし、暮らしを彩った、生活の芸術家でもありました。裁縫、大工仕事、ドールハウス、写真、旅先で収集したエキゾティックな品々…。本書では絵画作品にも描かれた、藤田がこよなく愛したものたちに焦点を絞り、そのプライベートな非売品の創作世界を解きあかします。本邦初公開の藤田撮影の写真、スクラップブックなど、貴重な図版多数をカラーで掲載。ここに現代美術の先駆者としての藤田嗣治が、蘇ります。
目次
第1部 住まう(住まい=アトリエ;インテリア)
第2部 手づくりする(裁縫;大工仕事;絵付け)
第3部 集める(フランスでの収集―パリの蚤の市;旅の思い出―中南米と東アジア)
第4部 写す・写される(被写体として;アマチュア写真家として)
第5部 書く(日記と絵手紙)
著者等紹介
林洋子[ハヤシヨウコ]
1965年、京都市生まれ。京都造形芸術大学准教授。東京大学文学部卒業、同大学院、パリ第一大学博士課程修了。東京都現代美術館学芸員を経て現職。博士(パリ第一大学)。専門は美術史、美術評論。著書『藤田嗣治 作品をひらく―旅・手仕事・日本』(名古屋大学出版会、2008)で、第三〇回サントリー学芸賞、第二六回渋沢・クローデル賞ルイ・ヴィトンジャパン特別賞ほかを受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やすらぎ
192
明治19年生まれの画家、藤田嗣治。その当時から欧州で作品を売り自活できた美術家。身の回りのものを手作りし生活を楽しみ、自分好みに装飾し感性を刺激する。メゾン=アトリエ・フジタ、手しごとの家にあるものを紹介する意欲溢れるカラー本。残された数多くの日記手記や写真からその時代の貴重な事実を知ることも多いという。愛用のトランク片手に世界を旅し、彼の手から生み出された全てのものが世界中の感情を豊かにする。本や絵画、芸術の奏でが守られ続けることできっと華やかな未来がやってくる。感性を大切する時代の足音が聴こえている。2022/11/15
アコ
18
“パリが愛した日本人”として有名な藤田嗣治。「これぞ真の芸術家!」と賛美の拍手を送りたい。画家として有名な藤田氏だけども絵画以外の創作にもなんと意欲的に取り組まれていることか。インテリア、裁縫、大工仕事、食器への絵付け、写真、文筆など。生活のなかで目にしたものすべてに彼の芸術アンテナが働き、素晴らしい作品に仕上げてしまう…とこちらはおもうも、ご本人はあくまで自然体で単純にひとつひとつに愛情を込めて作られていただけなのかもしれない。当時の写真界の巨匠たちのフォトジェニックともなっていた点も興味深い。2015/10/01
なおみ703♪
15
この前、ポーラ美術館でフジタの展覧会を観た時に、旅行鞄がアンティークでセンス良いなと思ったことと、額縁がとてもお洒落で可愛いなと思ったことが印象的で、画家のフジタも好きだけど、もっとプライベートの趣味の部分に心惹かれ、買ってしまった一冊。君代に行き着くまでの人生で何度もパートナーが変わるのだが、そりゃあ、モテるわけだと思った。高価なものというわけではなく、自分の目でアンティークでセンスのいいものを選んで、壊れていれば自分で修理して、住まいを整える。食器も作るし、パートナーには可愛い小箱をプレゼント。素敵。2021/04/29
チェアー
13
藤田嗣治は絵だけじゃないことが分かる。すぐれた工芸家であり、写真家であり、執筆者。いわゆる趣味人なんだ。これからフジタの絵を見るときは、額縁も見たくなる。そして、今回クローズアップされたのは最後の妻の存在。彼女は家や遺品を大切に持ち続け、今日につないだ。このことだけで、フジタは幸福だったんだなあと感じる。2020/04/09
べりょうすか
13
この前の展覧会で、小さな人形の家みたいなアトリエの模型や、手作りの額などが展示してあって、そのセンスの良さに感動した。この本で他にも染織や陶芸などいろんな手仕事をしていたのを知った。中でも絵入りの手紙が面白かった。日記も 実際みてみたい。 パリの蚤の市に行きたくなりました。2014/07/02