内容説明
社会主義体制とは「ふつうの人々」にとってなんだったのか。70年代のユーゴスラヴィアにおける留学体験と、「連帯」が権力を握った80年代ポーランドでの聞き取り調査を通して、歴史に翻弄される人々を市民の視線で考える。上司が旧ソ連派だったため拷問にあった下宿の主人、劇的な体制の変化により不可解な死をとげた元外交官などの記録によって、歴史の表面には出てこない人々の素顔が浮かび上がってくる。
目次
第1部 ユーゴスラヴィア(ベオグラードの夕焼け;ニナリッチはスーツケースの右隅にある;ユーゴスラヴィア版“イソップ物語”;身分証明書を見せろ;「さよなら」を言う間もなく;理念の崩壊と民族主義の台頭;時が流れて)
第2部 ポーランド(非共産党政権の誕生;ワレサと連帯運動の軌跡;明日を生きる“追放者”達;過去を支配する者が…;「労組連帯」のジレンマ;民主化のリーダーと“半民主主義”)
著者等紹介
笠原清志[カサハラキヨシ]
1948年埼玉県生まれ。慶応大学大学院社会学研究科博士課程単位取得修了、社会学博士。78年、旧ユーゴスラヴィアのベオグラード大学に留学。立教大学経営学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Nobuko Hashimoto
20
2009年の本だが内容は1978年に旧ユーゴに留学した頃の記憶を90年代初頭に書いたものや、90年頃からのポーランドの自主労組「連帯」を巡る集合と離散についてのレポートをまとめ直したもの。そのため、いつの時点から見た、いつのことなのかを意識する必要あり。書名通り、おおむね社会主義時代とそこから脱していく時代を生きた個人に焦点を当てている。元パルチザンで偉いさんにも顔の広い、しかし本人は静かに生きる女性の話や、凄惨な謎の死を遂げた知り合いの話などが印象的。著者のワレサへの評価が変化していくのもリアル。2024/03/10
ののまる
7
どの国にしても、どんな問題にしても、それに具体的に個人(庶民)の顔をつけていくというのが、とても大切だと再認識。2016/01/23
Jennifer
1
ユーゴスラビア/ポーランドの体制的移行・歴史についての前提知識がほとんどなかったので、真に理解するには程遠かったと反省。しかし、実際の人物とのエピソードはさすがにわかり易かったので、それだけでも十分読み応えがあると感じた。現在も社会主義のベトナム、そしてクメール・ルージュ下のカンボジアとを勉強中の身としては、大陸の反対側で起こった社会主義にも興味が起こるわけで。社会主義と一括りに言っても国によって形態がまったく違う。さらに個人レベルになると...。まだまだ勉強不足だと痛感した。2017/05/09
Nozaki Shinichiro
1
ユーゴとポーランド国で共産主義体制が終わった、その後の話。大きな変化に様々な境遇にあった個人はどう対応したか、という視点です。典型的な資本主義体制が破綻しつつある現代にも当てはまることも多く、考えさせられました。まぁこの本を読んだのは、去年クロアチア(旧ユーゴ)に行って、次はポーランドを狙ってるからというのが大きいですが…。2013/11/02
taming_sfc
1
社会学の視点から、社会主義体制および体制移行期を観察する視点は、おなじ地域を国際政治学・地域統合論から観察する私にとってとても新鮮でした。2010/05/31