内容説明
孫文、蒋介石、毛沢東…。中国近現代史に登場したキーパーソンの言葉を検証して、中国の異民族支配の根底にある、清朝以前から変わらない華夷秩序構造をあぶりだす。そこには、異民族を排斥する「華夷之辨」と、異民族をも併せ呑む「大一統」というふたつのバリエーションがあった。後者の流れをくむ「大家庭」の概念のもと、中国の多民族は一つというコンセプトをもって、異民族を支配しつづける現代中国。チベット、ウイグルなどでは漢民族の入植が進み、異民族の文化は危機にさらされている。報道統制を潜り抜け、民族蜂起、独立運動を背景としたテロ事件が散発的に伝えられるいま、その支配論理の根源を探る。
目次
第1章 「華夷之辨」と「大一統」―排外と融和の中華思想
第2章 革命派対変法派―清朝末期“二つ”の中華思想の闘い
第3章 辛亥革命と五族共和―排外に始まり融和に終わった革命
第4章 コミンテルン、共産党と国民党の確執―民族自決と中華思想
第5章 蒋介石の国民政府の時代―構造不変の中華帝国
第6章 共産党の民族政策―それは解放なのか?
著者等紹介
横山宏章[ヨコヤマヒロアキ]
1944年山口県生まれ。一橋大学法学部卒業。法学博士。中国政治・外交史専攻。明治学院大学法学部教授、県立長崎シーボルト大学国際情報学部教授を経て、北九州市立大学大学院社会システム研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こぽぞう☆
18
タイトル買いしたので、近代だけのものだったのに肩透かしくらった。内モンゴル、ウイグル、チベット。。色々な話しは漏れ伝わって来る。チベットについては既に何冊か本を読んでいるが、ダライ・ラマが亡命してるというのは、日本が中国に占領されて、天皇が亡命するようなもの。無茶だよね。内モンゴルなども同じような状況なのだろう。ソ連は崩壊した。中国は崩壊しないのかな?2018/12/30
coolflat
14
清末の革命運動は、華夷思想に基づく異民族支配排除の中華中心主義であった。しかし辛亥革命に成功すると、「五族共和」が唱えられた。孫文はその後に「五族共和」を否定し、漢民族優越の「同化論」を強調した。中国共産党が結成されると、コミンテルンの影響を受けて、漢民族が支配する中国中央部と辺境民族との「自由連邦制」を主張した。あきらかに華と夷の峻別であり、夷狄として差別されてきた少数民族の独立を唱えたのである。ところが蒋介石は、それは間違いであるとして、少数民族の自決すら否定し、内モンゴルや新疆を直轄の省に編入した。2017/02/16
おらひらお
4
2009年初版。中国の異民族観がよくわかる一冊です。そういえば高句麗を朝鮮とみるか、中国の一地方政権とみるかでおおもめしていたことを思い出しました。このくらい融通無碍でないと10億人を束ねることができないのかもしれませんね。2014/04/25
Hatann
2
中華民国以降における異民族支配のイデオロギーを著述する。異民族を排斥する「華夷の辨」と異民族を併せ呑む「第一統」というふたつの考え方を適当に使い分け、現在は後者の延長上にて異民族支配を正当化している。清末革命期には「華夷の辨」にて満州族を排して漢族としての独立を目指す方がやりやすいところもあったと思うが、独立を果たすと逆に少数民族を支配する立場となった。イデオロギーをなぞることも面白いのだけど、そもそも何故に支配を求めたかという実益にも触れてもよかったのではないかと思う。2017/12/30
啄木鳥
1
民族に優劣もないと思うのだけれど、そのような言い分が一つの国家として統一する口実になるんだろう。2020/09/06