内容説明
06年サッカー・ワールドカップ決勝戦で、ジダンは何に激怒してマテラッツィに頭突きをしたのか。この問いかけから、イスラム教徒(ムスリム)は、何に怒っているのか、そして我々のイスラム理解はいかに間違っているか、なぜ西欧はイスラムを執拗に嫌うのか、をわかりやすく解きほぐす。ムスリムに対してしてはいけないこと、そしてそれはなぜいけないか、なども豊富な実例つきで解説。異文化交流への道を探る。
目次
序章 ジダンは何に激怒したのか
第1章 「テロとの戦い」の失敗
第2章 隣人としてのムスリム
第3章 西欧は、なぜイスラムを嫌うのか
第4章 すれ違いの相互理解
終章 ムスリムは何に怒るのか
著者等紹介
内藤正典[ナイトウマサノリ]
1956年東京生まれ。79年東京大学教養学部教養学科(科学史・科学哲学分科)卒業。ダマスカス大学、アンカラ大学で研究に従事。97年から一橋大学大学院社会学研究科教授。ユネスコ人文・社会科学セクター科学諮問委員。専門はイスラーム圏と西欧の国際関係、多文化共生論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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AICHAN
36
図書館本。「(アメリカが戦争で)女性、子ども、高齢者、病人、お金がなくて逃げられなかった人たちなど、弱者を数多く殺害したことが、欧米と戦うことこそジハードと信じる若者を増やした」「世界じゅうのムスリムの怒りを掻き立てることの重大性を軽視し、戦争という手段を用いたアメリカとその同盟国は“テロとの戦い”という普遍的な課題について、ひどく愚かな選択をした」「西欧社会の思い込みというのは、異文化に対して時としてあまりに傲慢」「西欧がいう“イスラム原理主義者”を増やしている原因は西欧社会の態度にある」2016/08/04
ゲンショウ
32
らいぶらりあんさんにご紹介戴き拝読。人の不寛容を感じます。宗教を信仰する事は本来、私に帰せずの筈なのですが…。根を同じくするイスラム教、キリスト教、ユダヤ教が何故これ程争うのか?本来、共存して居た人々が何故…?強国の利害が生み出したこの状況を、改善する事すら出来無い現在の国際社会。世俗的な方法論では適わないのかも知れませんね…。2012/06/11
Humbaba
11
大切なものというのは,人によって異なる.同じ言葉であっても,それが何を指しているのかというのは異なっていることもある.相手と自分の違いを理解していないと,なぜ相手が怒りを感じているのかも理解できない.まずは互いを知ることが,歩み寄りの第一歩となる.2013/03/28
S.Mori
8
良い本でした。イスラム社会の人々がなぜ西洋社会に怒りを持つかよく分かるようになります。一口で言えば、西洋の世俗主義が、イスラム教をないがしろにしているのです。西洋ではキリスト教が形骸化していますが、イスラム世界ではイスラム教の伝統が社会の隅々まで浸透しています。その伝統は尊重すべきものなのに、西洋の社会では野蛮で人間性を抑圧するものとして見なされます。イスラム教やその社会が血管のない素晴らしいものというわけではありません。しかし、拝金主義が蔓延し、人間の尊厳がおろそかにされている西洋よりはましと言えます。2019/10/26
編集長
8
ワールドカップで相手選手に頭突きして退場させられたジダンの話から説き起こし、イスラムの人々の文化や価値観、生活と一体化した信仰心などを平易に説明している。ヨーロッパ諸国に広がる反イスラム・反移民の背景、暴力の連鎖を生むアメリカの政策への批判などが、新書的なほどよい詳しさで書かれていて参考になった。非イスラム諸国がしてはならないことは、①弱い者いじめ(とくに女性・子ども・高齢者の殺害)、②コーランやムハンマドに対する侮辱や揶揄、③イスラムの価値観や生活習慣を「遅れている」と見下さないことの3つ。心します。2015/05/09