内容説明
奴隷解放の理想を実現し、最先端の科学技術を誇る米国だが、独立・開拓時代の銃に対する価値観から抜け出せずにいる。大統領ですら銃を規制することはできない。年間に約三万人もの死者をもたらす銃文化は、根強い権利推進派によって守られ、その価値観は9・11とは何の関係もないイラクを侵攻する愚行へもつながっていった。しかし、銃に対する熱狂を、「狂気」の一言で片付けることはできない。銃に取りつかれたアメリカ人のメンタリティーの深層と、なぜ彼らがそんなにも、「銃に恋して」いるのかを検証する。
目次
第1章 史上最悪の乱射
第2章 銃がつくった国家
第3章 アメリカ銃社会の実情
第4章 銃なくば死を
第5章 銃は安全をもたらすのか
第6章 政治と銃
第7章 武器バザール
著者等紹介
半沢隆実[ハンザワタカミ]
1962年福島県会津若松市生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、88年共同通信社に入社。大阪支社、浦和支局、本社社会部などを経て、外信部へ配属。カイロ支局特派員、ロサンゼルス支局長としてパレスチナ紛争、アフガン、イラク戦争、ハリケーン「カトリーナ」被害などを取材。2007年から外信部デスク(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ごへいもち
19
とても良い本だった。世界中に背を向けて、というか立ち向かって?アメリカがなぜいつまでも銃規制をしないのかがわかったと思う。いろいろな事情があるが第一には若い国で暴力的に建国した記憶がまだ新しいからではないかと思う2014/07/01
OjohmbonX
6
アメリカの銃規制反対派の言い分を紹介する本。そういうロジックになっているのかと面白かった。「国家権力に一定の縛りをかけて市民社会を守る」が民主主義のベーシックな考え方だという理解はあったけど、それが「市民が銃を持つことで国家権力に対抗できる」という考えから、「銃規制に反対することが民主主義を守ること」となっている。荒唐無稽なようにも聞こえるけれど、歴史的な経緯などを丁寧に見ていくと、その論理がリアリティを持っていることが分かる。銃社会がもたらす現実が、その論理のリアリティをさらに補強する。2021/06/21
マイケル
5
先日、高校生が銃での自殺事件で大騒ぎとなった日本人には信じられない米国の銃事情。武装の権利は神が与えた絶対に不可侵な人間の権利、市民の武装を認めた憲法修正第二条、簡単に買える、ハンティングは聖書にのっとった行為、先制攻撃容認の「キャッスル・ドクトリン法」など日本人には違和感だらけ。正当防衛で無罪となったバトンルージュ日本人留学生射殺事件。核兵器は守護神という核武装論と銃の権利擁護とのつながり、トリガー・ハッピーの警察など。銃規制反対派として回顧録が話題のジョン・ボルトンも登場。多くの人に読んで欲しい本。2020/06/25
メロン泥棒
4
イラン戦争よりもはるかに多い年間3万人という人間が銃によって命を失っているアメリカという国家は未だに独立戦争のさなかなのかも知れない。アメリカ人が銃を持つのは国民性や伝統というべきレベルに達していて、そう簡単に銃規制は出来ないというのがよくわかった。現実問題国土が広すぎて、警察力にすべてをゆだねる事が出来ないというのも実情なのだろう。2010/07/24
1_k
3
著者の「銃規制反対派を非難したい!」バイアスがゆんゆんかかった 本なのだが、規制反対派の至極もっともな意見をそのまま載せているのでそっちの方が正しく見えてしまう。逆に著者(というか日本人全般)のナイーブで精神年齢12歳な平和ボケぶりが露骨に浮き彫りになる。これが戦後ニッポンの歪みだ、的な読み方もできる一冊です。飼いならされた日本人にはわからんだろうけど、圧政に対する抵抗権って重要ですよ?2012/08/26