内容説明
日本は世界第四位の軍事大国といわれる。しかしそれは、軍事予算、装備の質と量を意味するだけで、本当の軍事力をさすものではない。組織としての危機管理能力、指揮系統の柔軟性と迅速性がなければ、ただの張子の虎である。本書は戦前の陸軍、海軍の作戦行動の欠点を組織論という観点から明らかにし、今日につづく集団としての日本と日本人の問題点を探っていく。
目次
第1章 戦争に求められる季節感
第2章 社会階層を否定した軍隊
第3章 戦う集団にあるべき人事
第4章 誤解された「経済」の観念
第5章 際限なき戦線の拡大
第6章 情報で負けたという神話
第7章 陸海軍の統合ができない風土
著者等紹介
藤井非三四[フジイヒサシ]
1950年、神奈川県生まれ。72年、中央大学法学部卒。74年、国士舘大学大学院政治学研究科修士課程修了。財団法人斯文会、出版社勤務の後、出版プロダクション「FEP」設立。同社代表取締役。日本陸軍史、朝鮮戦争史を専門とする(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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skunk_c
51
2008年の書。雑誌「軍事研究」に連載されていた「少し斜めから見た戦史」を集めたもので、『失敗の本質』的な本を期待するとちょっと肩透かし。戦史の専門家のようで、エピソードには興味深い話もあったが、最後に現在の自衛隊とか防衛政策につなぐあたりに牽強付会なものを感じてしまった。またちょっと半端な知識も目につく。特に季節と戦争の時期のところで、緯度と低温を単純につないで論じるが、気候を学んだ者からするとちょっとねぇ。日本の米自給が昭和53(1978)年という間違いもあったり(1967年とすることが一般的)。2022/11/30
もりやまたけよし
32
戦前の日本の諜報組織が意外と優秀だったとは目からうろこ。全体的には陸軍海軍を色々とけなしているところはいまいち納得できなかった。どうやればよかったなんて、歴史のもしもと同じでだれも分かりはしないと思う。2023/02/07
nnpusnsn1945
32
日本軍について、両極端な意見が多いが、本書はバランスのとれた記述である。平易な文体で読み返しやすい。体罰や、郷土部隊、人事問題も興味深い。情報能力はあれど、せっかく得た物は活かされず、防諜も稚拙であった。米英は日本の情報がかなりわかっていたようだ。2020/12/27
ごいんきょ
13
私にとって今までにない視点でした。 これまでの見方を見直したいと思います。2024/05/06
CTC
11
08年集英社新書、もとは月刊誌『軍事研究』の連載。例の藤井非三四氏の著作で、この夏の増刷で5刷とのこと、著者の本で最も売れているものだろう。さて内容はタイトルが想起させるようなビジネス応用ニーズに応える組織論というより、ストレートに昭和陸海軍の過ちを考察するものだ。但し独特で論理的に問題を探る視座は、新鮮に映るものもあるかもしれない。著者の殆どの著作は光人社刊で、その“著者略歴”は数行、まるで謎の人だった(そして同社は参考文献を記さない)。本書の著者略歴だけでも価値があったな(参考文献もキチンと掲載)。2019/08/19