内容説明
情報ネットワークや市場経済圏の拡大にともなう猛烈な変化に対して、多くの人々がストレスを感じている。格差は広がり、自殺者も増加の一途を辿る中、自己肯定もできず、楽観的にもなれず、スピリチュアルな世界にも逃げ込めない人たちは、どう生きれば良いのだろうか?本書では、こうした苦しみを百年前に直視した夏目漱石とマックス・ウェーバーをヒントに、最後まで「悩み」を手放すことなく真の強さを掴み取る生き方を提唱する。現代を代表する政治学者の学識と経験が生んだ珠玉の一冊。生まじめで不器用な心に宿る無限の可能性とは。
目次
序章 「いまを生きる」悩み
第1章 「私」とは何者か
第2章 世の中すべて「金」なのか
第3章 「知ってるつもり」じゃないか
第4章 「青春」は美しいか
第5章 「信じる者」は救われるか
第6章 何のために「働く」のか
第7章 「変わらぬ愛」はあるか
第8章 なぜ死んではいけないか
終章 老いて「最強」たれ
著者等紹介
姜尚中[カンサンジュン]
1950年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。東京大学大学院情報学環教授。専攻は政治学・政治思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
174
出版された当時にはすぐ読んだのですが、最近また若い人に話す機会があるので読み直してみました。表題が当初あまり気に入らなかったのですが、読んで見直してみると夏目漱石とマックス・ウェーバーについてわかりやすく説明しているので結構チェックするところが増えました。私のような年寄りには、というところはありますが、若い人には読んでいてうなずけるところが結構あるのではと思いました。2016/01/09
mitei
168
著者はよくテレビとかで見ることがあるが、この本は漱石やウェーバーが如何に悩んでいたのかを書いていた。そして悩み苦しむことはそれが終われば大きなエネルギーになるので大事だと感じた。かなり哲学めいた本だが理解しやすかった。2011/04/09
パフちゃん@かのん変更
138
在日二世の東大教授、姜尚中氏日本名は長野鉄男。早稲田在学中から姜尚中を名乗り始める。夏目漱石を愛読し、マックス・ウェーバーと夏目漱石は似ているという(言ったのは友人)。夏目漱石の「こころ」や「それから」を引き合いに出していろいろな悩み(自我、金、知、青春、宗教、働く、愛、死)について語る。悩みこそは生きている証という。漱石の著書を読みたくなった。実はこの本が出された翌年、長男を亡くしている。神経症で引きこもっていた長男の存在はこの本の執筆と無関係では無かったであろう。ご長男のご冥福をお祈りします。2013/10/16
みゃーこ
135
なぜ?なぜ?そう問い続けると疲れることは疲れるけど、悩むにもパワーがいる。賢さも、そして若さも。悩むことなんてあんまり流行らないという風潮の世の中だけど、限界まで突き詰めて考える力を失わないことが人間の証のような気もしてくる一冊だった。2012/10/02
優希
126
悩みながらも自分と向き合ってきた姿が伺えます。軸になるのは夏目漱石とマックス・ウェーバーの話。特に夏目漱石から受けた影響が多いようでした。漱石と自身を重ね合わせることで、自己の確立という重要性を説いているのが興味深いです。かなり漱石のことを考察しているので、漱石論的な側面もあるように思いました。「悩む」ことを論じた本ではありませんでしたが、著者が悩んだ結論としての結晶と言えるでしょう。2016/10/19