内容説明
北斎をはじめとする江戸の浮世絵師たちにとって、版本の挿絵は重要な仕事であり、そこには、物語作者とのコラボレーション、対決を通じての創造のあくなき追求を見ることができる。北斎・馬琴の『新編水滸画伝』『椿説弓張月』から無名の作者、絵師の作品に至るまで、幽霊や妖怪、異界のものたちが跋扈し、生首が飛び、血がしたたる、残虐とグロテスクに満ちた「奇想」のエネルギーが横溢しており、斬新な技法、表現、意匠の実験が絶えずくりかえされている。本書は、この膨大な版本の世界を渉猟し、新発見の図版などから、現代のマンガ・劇画・アニメにまで流れる日本の線画の伝統の大きな水脈をたどり、その魅力と今日性を浮き彫りにする。
目次
はじめに 江戸後期挿絵の魅力
第1章 「異界」を描く
第2章 「生首」を描く
第3章 「幽霊」を描く
第4章 「妖怪」を描く
第5章 「自然現象」を描く
第6章 「爆発」と「光」を描く
第7章 デザインとユーモア
著者等紹介
辻惟雄[ツジノブオ]
1932年、名古屋市生まれ。東京大学・多摩美術大学名誉教授、MIHO MUSEUM館長。東京大学大学院博士課程中退、東京国立文化財研究所美術部技官、東北大学文学部教授、東京大学文学部教授、国立国際日本文化研究センター教授、千葉市美術館館長、多摩美術大学学長などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ねこ
116
江戸時代のインパクトのある挿絵を集めた本書。当時の識字率から文字より絵で表現する方が圧倒的にいい。現代と違い当時は夜、魑魅魍魎の跋扈する異界が存在し、幽霊、妖怪、斬首が日常の近くに有った事を考えると大変興味深い絵ばかりである。そんな中でやはり北斎の絵はダントツに素晴らしい。さすが世界の北斎!最後に…ダイバダッタはレインボーマンの師匠と思っていたのに「提婆達多」(ダイバダッタ)は、仏教で教えられる最大の極悪人でブッダを殺そうとした有名な仏敵と知りました。北斎によって無間地獄へ叩き込まれていました。…あぁ無情2023/10/19
Roko
27
お化けなんだけど、ちょっと愛嬌のある顔をしていたリ、吹き出しのようなセリフがあったり、日本のマンガの原点はこういうところにあるのかなぁ。ことばを超えた絵の力があるからこそ、世界から注目を浴びるということなのかなぁ。とにかくすごいなぁ。これは日本の誇りだと思う。2025/03/07
ゆきこ
26
江戸時代に描かれた読本の挿絵を約100点収録。挿絵の見所や物語の解説もわかりやすく、とてもおもしろく読みました。一瞬を切り取ったかのような「動き」を感じられる挿絵たち。細部まで工夫されたこだわりの構図やデザインにも驚かされました。ユーモラスでおしゃれな目次と口絵が特にお気に入りです。2019/03/25
あおい
18
葛飾北斎や歌川豊国らが描く版本の挿絵。生首、幽霊、妖怪…すごい迫力。恐ろしいものやちょっとコミカルなものなど作品のあらすじと共に紹介されてます。2016/05/21
テイネハイランド
16
本書は江戸期の読本の挿絵について、豊富な図例を用いて解説した本ですが、説明がとてもわかりやすく、情報量も大変多く、読んでいてとても楽しめました。葛飾北斎の挿絵が重点的に紹介されていますが、その絵をみるとやはりその実力は他の画家と比べて段違いだと感じます。美術の専門家の書いた本というと、過度に衒学的だったり説明が退屈なイメージがありましたが、本書についてはいい意味で裏切られました。著者の別の本もぜひ読んでみたいと思います。2017/05/04