内容説明
敬虔なカトリック教徒であり、国王を崇敬し、王妃を敬愛していたシャルル‐アンリ・サンソン。彼は、代々にわたってパリの死刑執行人を務めたサンソン家四代目の当主であった。そして、サンソンが歴史に名を残すことになったのは、他ならぬその国王と王妃を処刑したことによってだった。本書は、差別と闘いながらも、処刑において人道的配慮を心がけ、死刑の是非を自問しつつ、フランス革命という世界史的激動の時代を生きた男の数奇な生涯を描くものであり、当時の処刑の実際からギロチンの発明まで、驚くべきエピソードの連続は、まさにフランス革命の裏面史といえる。
目次
序章 呪われた一族
第1章 国王陛下ルイ十六世に拝謁
第2章 ギロチン誕生の物語
第3章 神々は渇く
第4章 前国王ルイ・カペーの処刑
終章 その日は来たらず
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
185
珍しい人物の生涯をつづったもので、ある意味中世の死刑に対する考え方を中心に歴史の表舞台に出ない人物が主役の物語です。このような仕事は昔から役割が決まっていたのでしょう。日本でも江戸時代に首切り浅右衛門ということで山田家がそのような仕事をしていたことを読んだことがあります。ここに書かれている人物は、考え方も立派な感じであったということがよくわかります。2016/11/20
ケンイチミズバ
117
寂聴さんの言わんとすることは、すごくわかる。けれど寂聴さんご自身もそのように、人間とは感情的なもの。死刑が抑止どころか民衆の娯楽と化した王制期フランス。大観衆を前に八つ裂きの刑の最中、手足が伸びただけでなかなか裂けないため裁判所に関節に切れ目を入れる許可を申請。大ブーイング。受理され、股や脇に斧を入れてようやく手足が飛ぶ。罪人の叫びはセーヌ対岸まで響いた。しかし、これ全て苦痛をいかに短くするかの人道的努力なのです。サンソンの苦悩、激動の革命期、あまりにドラマチックな世襲の死刑執行人サンソン家の実話に感動。2016/10/11
どんぐり
102
世界史上の出来事で一番に何を思い浮かべるかと聞かれたら迷わずフランス革命と答える。当時の混沌としたフランスで死刑執行人として生きた男にスポットを当て、当時の社会情勢、処刑のあり方、ギロチンの誕生等について書かれている。すごく面白い! 本書の主人公である4代目シャルル─アンリ・サンソンはルイ16世を含め、フランス革命で処刑された人のほとんどすべてに関わった。まさに歴史の裏面史。生まれた時から「人殺し」を義務付けられた彼の数奇な運命を辿る。日本の死刑制度についても考えさせられた。 歴史が好きな人におすすめ!!2020/05/31
星落秋風五丈原
91
ヒトラーの懐刀であるラインハルト・ハイドリヒは締首人―死刑執行人―と呼ばれた。『死刑執行人もまた死す』は、彼の暗殺計画を元に制作された映画だ。「死刑執行人」という言葉は職業であるが、悪い比喩として用いられている。大方の者が「死刑執行人」にどういう印象を抱くか、これ一つとっても明白。理屈を積み重ねても「生理的に嫌」という感情はどうにもできない。ならば死刑自体を止めればよい、という著者の持論に繋がってゆくわけだが、当時のフランスで処刑はショ―だった。筋金入りの王党派だったサンソンがルイ16世の首をはねる皮肉。2017/03/24
マエダ
87
世襲で代々死刑執行人であるサンソン一族だが「大サンソン」と呼ばれ歴史に名を残すのは国王ルイ16世を処刑した4代目シャルル・アンリ・サンソンである。本書では死刑執行人という特殊な役職にスポットをあて、業務、生活、地位、恋、差別、と描かれているが壮絶である。もともと国に雇われている身として国王を処刑するということの葛藤であったり、革命の時代背景などがわかりとても面白い一冊である。2016/02/11