内容説明
安倍晴明をはじめ、日本の歴史に深く関わってきた陰陽師の謎に満ちた役割とは?彼らがどのように日本を動かし、日本人の生活や心に大きな影響を及ぼしたのか。戦国時代には土木の天才、秀吉を陰で支えた技術者集団だったのではないか。また明治維新の成功にその謎のネットワークが動いたのではと、著者は陰陽師の歴史をひもときながら大胆な仮説を展開していく。そしてついに現代に生きる陰陽師に会いに出かける!『帝都物語』をはじめとする荒俣ワールドの真骨頂ともいえる作品。
目次
第1部 安倍晴明の子孫たち(土御門家の奮闘;近世の陰陽道)
第2部 吉備、上原大夫の知恵(カンバラ叩く人々;金神との闘い ほか)
第3部 土佐、芦田主馬大夫の謎(陰陽頭の足跡をもとめて;博士と散所)
第4部 高知、いざなぎ流大夫は生きている(式を飛ばしあう大夫たち;いざなぎ流大夫に会う ほか)
著者等紹介
荒俣宏[アラマタヒロシ]
1947年、東京生まれ。作家。慶応義塾大学法学部卒。幻想文学・神秘学・博物学研究家としても活躍している。大学卒業後、日魯漁業に入社。プログラマーとして九年間勤務した後、フリーの翻訳家となる。膨大な量の古書を収集し、博覧強記で知られる
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感想・レビュー
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SOHSA
40
《譲受本》幻想文学、神秘学研究者であり作家である荒俣宏氏による陰陽師末裔に関する研究本・エッセイ。陰陽師というと式神を巧みに操る貴公子安倍晴明をイメージしがちだが、明治の廃仏毀釈の難を逃れた民間陰陽師の姿は大きく異なり、風土記や土着神話、民俗学とも相俟ってなかなかに興味深い。形式のみが現代に残り真意が忘れられた祭事は多いが、改めてそれを掘り起こし掘り下げていくことは日本文化や日本人の源流に至る研究にも繋がる。本書は何より読んでいて楽しい。過去は時とともに消えゆく。だからこそその探究は人をわくわくさせる。2018/01/03
岡本匠
12
安倍晴明の後に、陰陽師達はどうなったのか?現代にはもういないのか?荒俣宏ならではの、調査力で追い求めてゆく。 そう言えば、荒俣宏は最近本を書いていないのでは?2016/05/23
月をみるもの
9
官から見捨てられた「博士」たちが、民間/地方での活躍の場をどう見つけて行くか、、、、と言うケーススタディーがすでに1000年前に行われていたのですね。。。2018/08/12
二笑亭
7
平安京のゴーストバスター安倍晴明についてではなく、陰陽師のその後についてのフィールドワーク。明治政府の神仏分離令・廃仏毀釈によって失業の憂き目にあった中央の陰陽師(いわば官僚)と、現地の信仰や修験道などとも合流しながらも戦後まで生き長らえた民間陰陽師たちの明暗が面白い。岡山の上原大夫の“前申し”は京極夏彦『魍魎の匣』に登場する御筥様のやり方に似ている。高知のいざなぎ流が今も命脈を保っているのは、大夫たちの柔軟性に拠るものだというのに感服。2022/11/12
SAT(M)
4
軽いルポ的な内容かと思って読み始めたのですが、がっつりアカデミックな内容で、面食らったまま読了しました。宮廷の陰陽師とはまた別の、今なお存在する民間の「陰陽師」についてスポットライトが当てられた一冊です。貴族政治における血なまぐさい権謀術数の黒幕としての陰陽師ではなく、村落の民衆の心のよりどころとなる、素朴な「陰陽師」像をここに見ることができます。2015/08/23