内容説明
アイルランドの民謡が長いのは、それがもともと、物語を語るメディアであったため。文字に頼らず、口承を旨としてきたケルトの末裔たちにとっては、歌もまた物語の一種なのだ。歌を通してアイルランドの語りに興味を抱いた著者は、緑の島の各地を訪ね、語り部や主婦、俳優、ミュージシャン、映画監督など様々な人に出会う。笑い話や妖精譚、運命と戦う美女の神話などから浮かび上がる、アイルランドの民衆史。それらを語る人々の、口承文学への熱い思い…。「妖精の国」の真実の「心」を、時にユーモアを、時に心あたたまるエピソードを交えて伝える好著。
目次
第1章 「語り部」に会う―コーク
第2章 「笑い」と生きる―ウェクスフォード
第3章 妖精を探して―ドニゴル
第4章 アイルランドの女―スライゴー
第5章 「物語り」はどこへ行くのか―北アイルランド
終章 伝えゆく心―ダブリン
著者等紹介
松島まり乃[マツシママリノ]
東京生まれ。旅行作家、シアター・ジャーナリスト。慶応義塾大学文学部英米文学専攻卒業後、中央公論社に入社。女性誌の編集者を経て、フリーに。雑誌を中心に旅行記、映画・演劇関連記事など幅広く執筆。ケルト音楽CDのライナーノーツも手がけている
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぱせり
5
幼い頃からあふれるばかりのお話に漬かって育ったアイルランドの人々。語り、聞き、語り、のお話の夕べ。アイルランドの、というより、とても身近な出来事のように親しみを感じて読みました。物語の力を強く感じたし、せめて子どもたちが小さいうちは、テレビを消して、たくさんのお話でくるみこむようにして育てたいものだとも思いました。2009/05/09
Mrs.Holmes
3
特に素敵だな、と思ったエピソードは6歳の時に妖精を目撃してから74年の間、妖精の存在を片時も疑うことがなかったというおじいさんについて。「言い換えれば、彼の家族や隣人、友人たちは彼の言葉をぶち壊すようなことを言わなかった」と・・・。お互いの世界や想像力を尊重し、大切にするって素敵だなあと思った。2009/04/26
刻猫
1
民族のアイデンティティとも言える「語り」。口伝によって継承してきたもの。意識せずともかつてはそこにあったもの。雄弁になれる石、語りの家、知った物語に出会う不思議。妖精の物語。歴史物語。ユーモア。教訓。2014/07/11
あんず
1
面白かった。先日、槇原敬之さんのライブでアイルランドがとても良い所だとの話しを聞き、読んでみました。歌に物語を綴ると言う心や、マッキーも言っていた「目に見えないもの」を大切に伝承しようとする人々の姿が興味深い。アイルランドいつか行ってみたい。この本、写真がカラーだったら良かったなと思いました。2013/03/09
j1296118
0
フィンが老いてあんなんなってしまったという展開がよくわからない、に対する「もし君が男で、私の歳になったらわかるよ」 に何とも言えぬ苦みを感じたの事。そうか、そのうち実感付でわかっちまうのか……2014/03/22