内容説明
子ども時代に性被害にあった人は驚くほど多い。小説「永遠の仔」のヒット、多発する少女の誘拐や監禁事件などをきっかけに、子どもに対する性暴力の影響の大きさが取り上げられるようになってきた。これまで「いたずら」などと表現されてきた行為が被害者のこころに及ぼした深い傷を、インタビューによって検証し、それをどのように癒していくか、また親として今すぐとれる防衛策は何か、そして社会全体としていかに発生を防ぐかまでを力強く提言するルポルタージュ。
目次
第1章 語られ出した性被害
第2章 封印された犯罪―性的虐待とは何か
第3章 性的虐待の加害者とは
第4章 心の傷を乗り越えるために―語ることを通じて
第5章 サポーターには何ができるか―サバイバーとともに生きるために
第6章 性的虐待の根絶のために―法律に求められるもの
第7章 性的虐待のない社会をめざして―私たちができること、やるべきこと
著者等紹介
吉田タカコ[ヨシダタカコ]
1969年、岩手県盛岡市生まれ。岩手大学人文社会科学部で心理学、社会心理学を学ぶ。フリーライター。編集者として雑誌記事、インターネットでのコンテンツ制作をてがけながら、性暴力が子どもにもたらす影響に関心を持ち、専門的な情報収集を重ねてきた。このテーマでの講演活動もおこなっている
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ろくせい@やまもとかねよし
18
近親者による児童性暴力を告発する。性と暴力の矛先が児童に向かうことに悲しみと怒りを感じた。指摘される法整備の不備にも大いに同調した。ただ、社会倫理的な正義を定義する方針に加え、根本的にこのような被害を防ぐ方策の必要性を感じる。2018/02/16
海星梨
5
心理の専門職としては、打ち明けられたとき、「話してくれてよかった」「よくここまで生きてきてくれたね、(こうしてあなたと会えて嬉しい)」、人間不信が強い場合は「あなたの言葉を信じる」、自責が強い場合は「あなたが悪いのではない」と伝え、責めない、矮小化しないのが基本的対応かな。後は、PTSDなら専門の精神科への紹介が必要だし、場合によっては自助グループが有効かも。SCなら確実に対応に動かなければならないけど、過去のこととして聞いた場合に、今後どのように面接で取り上げるか考えなきゃいけないよね、などと考えつつ。2020/08/29
りんふぁ
3
性犯罪者の、子どもにしか欲情しないのだから子ども相手にして何が悪い、という理屈に寒気がする。2015/10/05
たまちゃん
3
あってはならない子どもへの性的事件を犯す加害者は「稀にみる変態」だと思っていた。しかしこの本を読むと、社会的な信用もあるごく普通の大人が犯していることに驚く。実父、実兄、親戚等、近親者からの被害が一番多いという現実も受け止めなければならない。このおぞましい現実をまずは「知る」ことが最初の一歩であり大切なことではないかと思った。2012/12/25
ゆう子
3
人の人生を己の欲望で破壊した加害者と、幼い頃の記憶を封印し、フラッシュバックと戦いながら生き元被害者の男女たち。自助グループの不足や幼児の自己防衛にも触れている。2012/07/05