内容説明
宗教や文明が盛衰する中で、聖地は古来より不動のまま、無数の人々から巡礼の対象とされてきた。エルサレムは現在も複数の宗教の聖地であり、メッカはイスラム教成立以前から聖地として機能していた。なぜ聖地は動かないのだろうか。その深層には何があるのか。サンティアゴ・デ・コンポステラ、日本の奈良、ギリシャの神殿をはじめ、関連する様々な事象を考察しつつ、聖地という空間がどのような存在なのかを明らかにする。
目次
1 聖地の定義
2 石組み
3 この世に存在しない場所
4 ドン・ファンの教え
5 もうひとつのネットワーク
6 巡礼
7 世界軸 axis mundi
8 二つの聖地
9 夢見の場所
10 感覚の再編成
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Bartleby
7
実際に著者が聖地を巡りながら考えた聖地というものの定義が紹介されている。中でも「聖地では感覚の再構成が行われる」という定義が印象的だった。今、京都に住んでいるので、街の中によく神社がある。そこにふらっと入ってみると、騒がしい外の空間と違い、時間がゆっくり流れているような感覚になる。聖地というほどの場所でなくても、こういうことはある。これも感覚の再構成のうちに入るのかもしれない。2012/05/18
アルクシ・ガイ
6
なぜ聖地は1cmも動かないのか。その説明が甘い。石はいたるところにあるのだから、そりゃ聖地にもある。旧神の聖地に新神の聖地を上塗りするのは、旧神の信者を取り込むためです。この段で拍子抜けしたせいで、あまり興味を持って読めなかった。2021/11/17
きいち
5
聖地は一センチたりとも場所を動かない、だから石組という特別な目印が作られ、人が集まり、思いや考え、感覚のほうが動いていく…と、聖地の回りを考えを順番に巡らせていくような作りが印象的だった。理屈じゃない感じを直接解説していくことはほんとうにしんどいことなのだなあと思う。そのしんどさが感じられる良い本だと感じた。2012/07/07
ゲニウスロキ皇子
4
宗教学の大家であるエリアーデに師事していた植島氏の作品。従って、本書の随所にエリアーデの影響が見受けられる。まずエリアーデを一読してから本書を手に取るとさらに分かりやすいかもしれない。論の内容としては人々の想像力を捉える聖地という空間の象徴分析といったところか。試論的な作品ではあるが、聖地研究をするのであれば、多くの示唆が得られる良い本だと思う。2011/11/29
gu
3
まず驚いたのは聖地は信仰される宗教が変わっても聖地であり続けるということ。聖地とは外部化された記憶であり、時間と空間の分節であり、身体感覚を変容させる気付き(夢見)の場所であり、・・・。これをヒントに何かを考えたいと強く思わされる。養老天命反転地に行ってみたい。2014/07/22