内容説明
形而上絵画と呼ばれる前人未到の様式の創始者で,「シュルレアリスムの先駆者であり,同時に裏切り者」と言われるほど崇められ,そして妬まれた20世紀イタリア最大の巨匠デ・キリコ。一度目にしたら二度と忘れられない謎の雰囲気と憂愁をたたえた神秘的な絵は,現実世界の背後にひそむ異次元の世界で演じられる不思議な無言劇である。
目次
第1章 出発の不安
第2章 謎めく物たち
インテルメッツオ 裸になったデ・キリコ
第3章 絵画への旅立ち
第4章 虚構の絵画
デ・キリコこの1点 〈エブドメロスの出発〉―永遠に完成しない旅(峯村敏明)
記憶と忘却(エッセイ)(多木浩二)
ヘルメス,それは私だ(評伝)(峯村敏明)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たろーたん
1
キリコの特徴は、「荒涼とした広場での暮れる夕日による影、アーチ状入り口が並ぶの建物、顔がのっぺり卵のキメラ化したマネキン」だと私は思う。最初は、シュルレアリスムの画家として無関係な変な物が色々と置いてあると思ってたけど、よくよくみると、そのモノよりも置かれている場所が気になってきた。モノはともかく、人気のない場所に、長く伸びる影が、多くのキリコの絵に共通している。色々なシュルレアリスムの絵画を見てきたけど、こんなに伸びた影を熱心に書いてるのって珍しいかも。この寂寥とした感じがキリコみなのかもしれない。2023/12/11
風見鶏
1
「通りの神秘と憂愁」「大きな塔」が好き。としか言いようがない。絵について明るくない自分では。2013/12/01
MR直毛
0
描かれるのは「記憶と忘却のせめぎあい」。彼は近代化の中で葬られてきた記憶の価値を掘り起こそうとしているのか、忘却の反復に希望を見出そうとしているのか。。はたまた、絶望?? 手元が影っていて暗く、いちばん遠い焦点のエリアは乾いた光で照らされている対比がメランコリック。 正直見ていて気持ち悪い。ただ「通りの神秘と憂鬱」のように少女のような純真な心の持ち主が迷い込んだ世界というふうに激しい自己解釈をしてみると、ゲームの世界みたいに見えてきて楽しめた笑 2015/07/11
ぬまけん
0
A2019/12/10