目次
秋の田のかりほの庵の苫をあらみわが衣手は露にぬれつつ
春すぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山
あしびきの山鳥の尾のしだり尾の長ながし夜をひとりかも寝む
田子の浦にうち出でて見れば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ
奥山に紅葉ふみわけ鳴く鹿の声聞くときぞ秋は悲しき
かささぎのわたせる橋におく霜の白きを見れば夜ぞふけにける
天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも
わが庵は都のたつみしかぞすむ世をうぢ山と人はいふなり
花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に
これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関〔ほか〕