出版社内容情報
ジャンルを越え、小説の面白さをとことんまで追求した画期的アンソロジー。第10回配本、第1巻『漂泊と流浪』は、この選集を象徴するような冒険物語の数々を、文豪の傑作から古典的な空想科学小説まで全16編収録!
●編集委員/逢坂剛 大沢在昌 北方謙三 船戸与一 夢枕獏
[編集室から]
劈頭の巻である。ここに収録する長編2編でこの叢書に収録される作品の幅を提示することになる。
編集委員は悩んだ。結局、大衆小説の枢・江戸川乱歩の本作が選ばれた。
財宝。復讐。大海原。「冒険」物語のあらゆる要素が入っている。
その対極は井上靖である。砂漠。騎馬の民。宝石の首飾り。
さらに短掌編では文豪と言われる作家の作品と「空想科学小説」の作品をかみ合わせた。
奇をてらったわけではない。必然、だったような気がする。
[収録作]
【長編】
江戸川乱歩「白髪鬼」
井上靖「敦煌」
【短編】
吉川英治「鬼」
司馬遼太郎「奇妙な剣客」
火野葦平「手」
井伏鱒二「ジョン万次郎漂流記」
野上弥生子「海神丸」
押川春浪「月世界競争探検」
香山滋「緑の蜘蛛」
海野十三「軍用鮫」
橘外男「マトモッソ渓谷」
小栗虫太郎「火礁海(アーラン・アーラン)」
【掌編】
夢野久作「瓶詰の地獄」
小川未明「眠い町」
森鷗外「寒山拾得」
中島敦「山月記」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
119
第1巻には、副題の「漂泊と流浪」とあるように様々な場所への移動などがキーとなっています。ショートストーリー4編は昔読んだものがほとんどです。短編5編は野上弥生子、井伏鱒二のは既読でした。空想科学小説は5編でこれは未読作品ばかりで様々なところへ出かけあるいは探検ということでに日本SFの草分けのような感じです。長編は江戸川乱歩と井上靖で既読でした。敦煌は何度読んでもいいですね。2016/03/18
starbro
64
集英社の創業90周年企画 傑作小説大全「冒険の森へ」全20巻完読プロジェクト第十一弾は第1巻「漂泊と流浪」です。今巻は第1巻だけあって懐かしい名作中心の漂っている小説集です。個人的なオススメは、夢野久作の「瓶詰の地獄」と江戸川乱歩の「白髪鬼」です。また大司馬遼太郎が女陰の縦横に関して書いているなんてビックリしました!嵐山光三郎が乱歩フリークだったとは・・・驚きです!!! 2016/03/25
ぐうぐう
19
『冒険の森へ』第10回配本にして、ついに1巻目の登場。テーマは「漂泊と流浪」。夢野久作「瓶詰の地獄」で、堂々幕を開ける。ユニークなのは、掌編、短編、長編で構成されるシリーズにおいて、今巻にだけ空想科学小説というパートが配置されていることだ。海野十三、香山滋は当然のことながら、なんと小栗虫太郎の名前も入っていて、実に楽しい。しかし、乱歩の長編「白髪鬼」がすべてをさらってしまう。それほどにこの作品は、異様であり、エネルギッシュであり、何よりもおもしろい。(つづく)2016/03/12
keroppi
6
なかなか中身の濃い一冊。次から次へと現れる冒険の数々。活字の海に漂い、行間の森へ迷い込む。行き着く先は、恍惚の島か、迷宮の国か。冒険に浸りきった数日だった。2016/04/08
AR読書記録
5
執筆陣といい編集委員といい相当に豪勢。掌編、短編、長編、そして空想科学小説と、変化のある分類も好き。ボリュームがけっこうあるので、これからシリーズ読みしていくことにすると大変だな... 印象に残るのはやはり空想科学小説部門で、押川春浪の明治の月世界冒険SFはもう断突に趣深いが、小栗虫太郎や香山滋、海野十三などが(そして掌編部門には夢野久作もな)ずらずらと名を連ねて、壮観。シーラカンス発見のニュースなどがさらりと織り込まれていたりするのも、現実世界が想像世界を押し広げる様子が垣間みえるようで面白いなぁ。2016/08/21
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