内容説明
現代社会における宙吊りの人間状況に光を当て、人間性の回復を希求するユダヤ人作家・ベロー。アメリカ社会の原罪とも言うべき人種問題を通して、人間性の本質に迫る黒人作家・ボールドウィン。現代人の虚無感を直視して、前衛性に富むメタフィクションを生み出した・バース。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風に吹かれて
21
生きるには、世の中に自分を存在させ存在していることを感じられるように日々を摑まなければならない、一日一日の日々を。自業自得のところも少なからず感じさせられる主人公で共感しにくいのだが、世間が真に手を差し伸べてくれるとは限らない現実を見つめさせる『その日をつかめ』。犯人が欲しければ捏造しても黒人を犯人に仕立て上げる差別社会、その中で寄り添い合いながらお互いのために尽くそうとする街の片隅に生きる人々を描く『ビール・ストリートに口あらば』。➡2020/12/22
pyoko45
10
バース『酔いどれ草の仲買人』のみ。長い道のりだったけどすごくよかった。饒舌で癖のある眉唾もの登場人物が山ほど登場して脇道それまくりお腹いっぱい状態になるのはピンチョンに似たテイストなれどきっちり伏線を回収して本筋に戻してくるので意外と読みやすい。詩人の波瀾に富む道中記に加え存在自体が冗談としか思えないトリックスター=バーリンゲームの暗躍と出生の謎、それを解く手記の探索行など興趣の尽きることはなく徐々に明かされる手記の中身も珍妙で擬古文調の翻訳も奏功して滅法面白い。感動の大団円で充実の読後感。素晴らしい。2017/09/03
sabosashi
2
ビール・ストリートに口あらばのみ。黒人による抗議文学の一端を画す。下町の雑駁さにも多く触れ、猥雑さがみちた空間であったが、しだいに問題が収束し、敵なるものは誰かが声高く語られていく。その一方で人間愛も謳われていく。NYの官憲による黒人差別の実態が熱く示されるが現地のひとたちには当たり前であっても他の世界のひとには未だにかというオドロキ。ここでは黒人に加えイスパニックも登場し現在の米国が抱える問題の展望も示される。エスニックと貧困の悪循環とでもいえるもの。かくして米国に希望なるものはありえるのか。2013/11/10
m_s_t_y
1
『酔いどれ草の仲買人』前半は主人公に感情移入できなかったし、変装の繰り返しでうまく物語に入ることができなかった。後半バーリンゲームの出自が明らかになる辺りから面白くなって一気に読めた。前半の小さなエピソードの登場人物が後半に入って次々に繋がってくる。変装や同一人物の判明などがあって、トータルの登場人物の数は意外に少ない。ラストは祭りの後のような感じでしんみりする2011/06/05
するが
0
酔いどれ草の仲買人を読んだ。純文学というよりエンタメとして読んだ。バーリンゲームがカッコイイ。てっきり一緒には必ず出てこなかった召使に化けてるのかと思ってたんだけど・・結局どうだったんだろうなあ2006/03/20