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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
長谷川透
24
旧共和制キューバを舞台にした青春小説だが、「僕」の愚直なまでに素直な性体験を土台にした青春小説である。自慰行為について雄弁に語り、売春宿に通うも本番行為を果たせない。童貞喪失後は性への好奇に拍車がかかる。映画や文学に対する博識を存分に披露するものの、全てセックスに帰着させてしまうのがこの男だ。革命前の青年のアバンチュール。この語り手は「父は僕より長生きすることになる」と語っている。つまりこの語りは幽霊だと考えることもでき『亡き王子のためのハバーナ』は革命後の廃頽したハバーナに響く哀しき音楽なのである。2012/11/25
スミス市松
23
海と光と夜の街ハバーナにやってきて生まれて初めての螺旋階段を昇った瞬間、呆れるほど奔放な「ぼく」の思春期が始まった。貧民街での女性遍歴にはじまり、映画館での痴漢行為、覗き、ナンパ、多種多様な美女たちとの不貞行為にいたるまで、二段組550ページ超をフルに使って語り尽くされるエロス、エロス。ドビュッシーもホメーロスも数多の映画作品も語り手の軽妙な言葉遊びのダシに使われる始末で実に手に負えない。しかしそんな性愛の告白を辛抱して聞き続けていると、今は亡き40~50年代の自由で楽しげなハバーナが脳裏に映し出される。2012/09/03