内容説明
「あのポプラの上が空」「われ弱ければ―矢嶋楫子伝」、そして最新長編「母」と、三浦文学の特色をそれぞれ発揮した小説三編を収める。全20巻、ついに完結。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あつひめ
42
<母>全集14巻目は家族や母の思いを集めた作品集のような気がする。小林多喜二の母、セキの話。貧しい時代でも一生懸命生きようとする人たちはきっとたくさんいたのだろう。希望や夢を持って。叶わなくとも貧しさと戦っていたのかもしれない。その中で故郷を離れ新境地で生活しながら息子を思い家族を思いながら暮らした日々を回想するセキの言葉の一つずつの重みが伺える。多喜二の最後の姿は、親として自分の身を刻まれるよりも辛いことだったのだろうと自分の息子に重ね合わせて考えてしまう。正直に生きるだけでは人は幸せにはなれないのか。2012/10/23
あつひめ
42
<あのポプラの上が空>今回の舞台は札幌中心部。植物園や道庁の池が出てくる。こうして小説の舞台となった場所を日常的に歩いていると小説に出てくる家族に出くわすのでは?なんて気にもなってしまう。何不自由なく見える家族。実は不自由だらけの家族である場合もいろんな小説で目にする。それでも、みんなが自分の歩幅で歩こうとする。みんな歩幅が違うからうまく行進できないようなすれ違いが起こるのか。原因は小さなことでも日々の垢が身につくようにどんどん膨れ上がってしまう。次世代を担う二人のこれから余韻を含ませたラストだった。2012/10/23
あつひめ
35
<われ弱ければー矢島楫子伝>三浦さんの作品を読むと本当にいろいろな人に出会うことができる。恥ずかしながら矢島さんの存在を私は知らなかった。でも、時代の嵐の中でもみくちゃにされながら生きた人なのではないかという気がします。今でも許されることと許されないことはある。時代のせいにできない部分もある。でも、人の心はそう簡単に物分りよくお行儀よくさせることもできない。人を愛すること、人を許すこと。脳みそではわかっていても心が意に添わないこともある。女であるが故に苦しむこともある。強さと弱さを持った女性を思い描いた。2012/10/23
イボンヌ
6
3つの作品が掲載されています。どれも素晴らしい。「母」は小林多喜二の母親、小林セキの生涯について本人の語口で書かれています。小林多喜二がどんな人だったのか、よくわかります。蟹工船を読んでから。または読む前にどうぞ。2017/01/16