出版社内容情報
「どうしておまえだけが、祝福を受けたの」
そう言って僕を痛めつけるねえさんは、
まるでうつくしいまま死んでいる蚕のようでした。
生きるための信仰とは、なにか。
第69回群像新人文学賞受賞作
***
この町で異教の神様を信じることは、
生きながらにして死ぬことと同じだった。
北海道南西部の小さな港町で暮らす姉弟。
ふたりは異端者の子として迫害され、
やがて暴力を伴う依存関係へと陥ってゆく。
そこに救済は、すべてに先立つ愛はあるのか。
装画:山口十和
装幀:六月
【目次】
内容説明
北海道の小さな港町で暮らす姉弟。ふたりは異端者の子として迫害され、やがて暴力を伴う依存関係へと陥ってゆく。そこに救済は、すべてに先立つ愛はあるのか。北海道南西部の小さな港町を舞台に、信仰と迫害、暴力と依存を描いた第69回群像新人文学賞受賞作。
著者等紹介
冬島いのり[フユシマイノリ]
2005年、北海道札幌市生まれ。2026年、「夏蚕の翅」で第69回群像新人文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
もぐたん
54
第69回群像新人文学賞受賞作。歪な関係の、ねえさんと僕。ねえさんが進学で家から出ることにより、それぞれの世界で生への問いと向き合う。内面の深い部分を見つめながら、魂がひきちぎられた身体で生きることの痛みと欠乏感を鮮烈に描く本作。頬杖をつくような憂鬱というよりも、血を吐き悶えるような焦燥感や嫌悪感、無意識の死への希求を自覚した瞬間の苦しみと安堵を筆者ならではの流れるような美しい文体で描いている。灰色の海、埃の舞う部屋に象徴される、どんよりとした停滞感の中、人が生きることの哀しみを丁寧に紡いだ一冊。★★★★☆2026/09/18
いちろく
14
読み進めていくうちに直ぐに気になったのは独特な語尾の使い方。4章から語尾が変わることで作品自体のリズムが変わった印象も受けた。この作品も内容にはあえて触れず。奥付の著者の経歴をみて驚いたのも事実であり、これから先、二作目、三作目とどんな作品を紡ぐのか? 気になったのも本音だ。2026/10/08
まる子
10
第69回群像新人文学賞受賞作。北海道が舞台で北海道出身・在住の作家さん。姉・柘(つげ)椿、弟・柘紫蘭はキリスト教を信仰し村八分(異端者として迫害)になり子供を置いて出て行った。この姉弟の姉は精神的に自身へ暴力的。進学した小樽でキリスト教に出会った事により「神の愛」を知る。自分をあれだけ傷つけていた姉が、夏の蚕から出して生きるようと変えられた。全体的に純文学寄りの印象を受けました。(と思ったら、「群像新人文学賞」は純文学の新人文学賞でした😅)この作品は芥川賞にノミネートするのだろうか?2026/10/09
沙智
3
幼い弟視点の敬体の一人称語りに惹かれて手に取ったが難しかった。難解というよりは普段自分に見えていない世界の話をしている点において。2026/09/20
ジャッキー
1
遠藤周作や三浦綾子を思わずにはいられない作品。21歳でこの深みとは、驚くばかり。詩的な間合いと静けさのある言葉選び、そして中学生とは思えない会話の数々。重苦しい日々のなか、正の光走性のままに街灯へ向かって飛び続け、力尽きるのか。それとも負の光走性に従い、地を這うように生きるのか。どちらにせよ希望は見いだせないと思いながら読み進めたが、彼女らの心をほどいてくれる人との出会いがあり、街灯ではない確かな光である信仰へと向かうことができた。それが何よりの救いだった。美しい表現が美しい世界をつくる美しい作品でした。2026/09/19




