出版社内容情報
同じ月でも、万葉の空には暖かく明朗に輝いていたけれども、平安王朝の人びとにとっては孤独な悲哀感を伴う冷たく澄明な光を降りそそぐものだった。
「梅」と「桜」はともに春を代表する花ではあるが、それが表象するものごとには、微妙だが決定的な相違がある。
古典的景物の代表が「雪・月・花」であって、風や雲、雨、もみじや菊などではないのはなぜか。
日本の作品だけを見ていては、日本語のことばが担うイメージにどのような構造的な秩序があるのか、知ることはできない。
なぜなら、古典日本語は、中国大陸からもたらされた多くの文物、とりわけ漢詩文を基盤にして創られたものだったからだ。
奈良・平安びとは、膨大な漢文を書写・訓読・翻訳し、さらに模倣的創作を盛んに行った。
そうして形づくられた「王朝漢文世界」を基盤として、
「和と漢の相互干渉」という平安文学のダイナミズムが生まれ、
古典日本語固有のイメージが形成されたのである。
和歌と漢詩を丹念に見比べ、豊かな古典詩歌の深い森に分け入って、「イメージの文法」を見出す。
日本古典と漢文学の双方を比較「和漢比較研究」に取り組んできた著者がおくる、
古典の世界を深く味わうための、イメージやシンボル、比喩に注目する「読む辞典」。
【目次】
内容説明
万葉の月は暖かく輝くが、平安びとには冷たく澄んだ光を降りそそぐ。梅と桜が表象する物事には微妙だが決定的な相違がある。古典日本語のもつ豊かなイメージの力は、漢文という偉大な異国の言語を吸収した上で、自らの文化と言葉を自覚的に磨き上げる中で生み出された。和漢比較研究に心血を注いだ著者が詩歌の森を分け入り編んだ珠玉の「読む辞典」。
目次
1 光り輝くものたち―沈黙の秩序(月;螢;星)
2 鳥の声と花の香―花鳥表現のウチとソト(鴬;ほととぎす;梅;桜)
3 彼方からの訪ない―習合的受容(風;雲;雨;舟)
4 たぎる思い―抒情の構造(滝;涙;塵;こころ)
5 移ろいと永遠―色の美学(菊;露;もみじ;雪)
著者等紹介
渡辺秀夫[ワタナベヒデオ]
1948年、横浜市に生まれる。早稲田大学大学院文学研究科日本文学専攻博士課程修了。文学博士。専攻は平安朝文学。信州大学名誉教授。2025年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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