出版社内容情報
言論はいかに弾圧され、口を封じられるのか。どうやって人々は生き延びるのか。
台風の如く、人々を翻弄し、敗戦に至る日本の行く末を決定した天皇機関説事件。
「昭和百年」に「合法無血のクーデター」の真相に迫る。
評伝『江藤淳は甦える』の著者による、天皇と憲法をめぐる人間ドラマ!
宮沢俊義は蓑田たちから次のターゲットとされていた。昭和十年には危うい位置に座っていたのである。美濃部の後を継いだ憲法学の少壮教授は、いかに巧みにサバイバルしたか。それは当人には棘となり、良心は痛み続け、戦後にまで尾を曳く。美濃部とは違う宮沢の「小さい」ありよう。それを他人事として批判するだけではすまされない。大なり小なりあの「小さい」ありようは当時の人々に内在していた。当時に限定することなく、いまの我々、いや私にもそれがあることを認めざるを得ない。史料を注意深く読んでいくと、その「小さい」ありようは、東京帝大出の官僚にも、政治家にも、それどころか、首相で海軍大将の岡田啓介にも、はるか上の「最後の元老」西園寺公望にも、雲の上の昭和天皇にも分有されていたのではないかとも思えてきた。けっして他人事ではないのだ。(あとがきより)
【目次】
■連載各回目次
第一章 憲法と東大法学部
第二章 「抹殺学士」蓑田胸喜と「原理日本」の愛読者たち
第三章 美濃部「免職」の危機と、蓑田の「談笑解決」術
第四章 自称「憲法学者」松田源治文相、自ら渦中に飛び込む
第五章 「維新」四月号が企画した貴族院議員「機関説賛成反対」アンケート
第六章 政党没落の殊勲者 : 鈴木喜三郎政友会総裁と山本悌二郎元農相
第七章 岩波茂雄と長谷川如是閑の後退
第八章 検察と検閲の現場は口を揃える : 問題は天皇機関説ではなかった
第九章 昭和天皇が精読したパンフレット「大日本帝国憲法の解釈に関する見解」
第十章 「逆臣」真崎甚三郎から見える昭和十年
第十一章 天皇も三島も丸山も、真崎を嫌った
第十二章 もうひとつ奥にある「顕教」と「密教」
第十三章 『肉弾』世代の、怒れる在郷軍人たち
第十四章 美濃部の貴族院議員辞職と「陛下の思し召し」
第十五章 「御用掛」清水澄の「憲法」定例進講と時事解説
第十六章 天皇機関説事件、終息す
第十七章 庶民たちの「天皇機関説」世間噺
第十八章 「君の説、借りたよ」宮沢俊儀と丸山眞男と美濃部達吉の「八月革命説」
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