出版社内容情報
停泊地となる居場所を見つけること。
老いの過程を肯うこと。
戦争の記憶を引き継ぐこと。
青果市場の関係者や近所の人々が出入りする「いちば食堂」。そのひとはいつも同じ時間にあらわれ、テーブルに古い文庫本を広げては手帖になにか書きものをして過ごす。
9年ぶりの長編小説にして新たな代表作。
「食べてくれるひとの顔を具体的に思い浮かべて、よいものを提供したいという気持ちが、料理の味を決める。準備や技術を、愉しさ、喜ばしさが超えていく。賄いをつくるのが楽しいのは、ありあわせのものを使って、味覚をいかに喜ばせ、いかに食欲を満たすかを、そのつど現場で考え、すぐに試すことができるからだ。丕出子さんの反応は家族とまるでちがう。素直というような言葉では収まらない大らかさがあるのだが、笛田さんにはうまく説明できない。丕出子さんと食べるときは、食堂の空気ぜんたいを賄っているような気がするのだ。」(本書より)
【目次】



