出版社内容情報
停泊地となる居場所を見つけること。
老いの過程を肯うこと。
戦争の記憶を引き継ぐこと。
青果市場の関係者や近所の人々が出入りする「いちば食堂」。そのひとはいつも同じ時間にあらわれ、テーブルに古い文庫本を広げては手帖になにか書きものをして過ごす。
9年ぶりの長編小説にして新たな代表作。
「食べてくれるひとの顔を具体的に思い浮かべて、よいものを提供したいという気持ちが、料理の味を決める。準備や技術を、愉しさ、喜ばしさが超えていく。賄いをつくるのが楽しいのは、ありあわせのものを使って、味覚をいかに喜ばせ、いかに食欲を満たすかを、そのつど現場で考え、すぐに試すことができるからだ。丕出子さんの反応は家族とまるでちがう。素直というような言葉では収まらない大らかさがあるのだが、笛田さんにはうまく説明できない。丕出子さんと食べるときは、食堂の空気ぜんたいを賄っているような気がするのだ。」(本書より)
【目次】
内容説明
青果市場の関係者や近所の人々が出入りする「いちば食堂」。そのひとはいつも同じ時間にあらわれ、テーブルに古い文庫本を広げては手帖になにか書きものをして過ごす。九年ぶりの長編小説にして新たな代表作。停泊地となる居場所を見つけること。老いの過程を肯うこと。戦争の記憶を引き継ぐこと。
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- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
シナモン
99
読み切ったー。「いちば食堂」を舞台に交錯するさまざまな生活と人生。美味しそうな料理と活力あるお客さんたち。生きていくって食べることだなぁと思わされる。対していつも同じ時間に現れカレーとコーヒーを注文し、父が残した古い文庫本を開く阿見さん。静かに老いと向き合う姿が心に残る。私にとって「いちば食堂」のような停泊地って…。他人事でない自分の老いとも向き合う一冊だった。 2026/03/10
アキ
89
長い読書だった。著者の作品をそれほど多く読んでいる訳ではないが、これは代表作になるような小説になるのではないでしょうか。登場人物も場面も取り立てて特別な人もおらず、何か事件が起こることもない淡々とした日々の日常が綴られているだけなのに、何という芳醇な世界。それは、戦争で死んだ父親が遺した8冊の本をポケットに入れて毎日読む阿見さんや、いちば食堂で接客しながらお客さんとやり取りをする丕出子さん、厨房の料理人、笛田さんなどが織りなす空間が心地よさを感じさせてくれるため。そしてシャボン玉のように儚いものでもある。2026/01/29
pohcho
65
青果市場の片隅にある小さな食堂が舞台。配膳の丕出子さんと雇われ料理人の笛田さん。謎めいた初老の常連客(阿見さん)の三人の視点で物語は進む。特にこれといったストーリーはなく、阿見さんの思索と食堂の常連さんたちの世間話、丕出子さんと笛田さんの家族の話をずっと聞いているだけなのだが、だんだん自分もその場にいるような気になってくる。一つの話が違う話とつながったり付け足されたり。整理されるどころかだんだんと混沌としていき、いつしかその場にやわらかく溶け込んでいく。その感覚がとても心地よく感じられた。2026/05/26
よこたん
40
“料理を食べてくれたひとからうまかったと言われるのは、じつにありがたく嬉しいことで、それが日々の仕事の励みにもなっている。そうとはっきり言われなくても、食べ方や店にきてくれる頻度からして、なにか役に立っているんだと想像して安堵することもある。” ゴルフ練習場と市場に挟まれた場所にある「いちば食堂」。店で働く人たちと訪れる客の、行きつ戻りつする思考と、静かに流れる季節と淡々とした日常とゆるやかな変化。ずっしり730頁のボリュームながらあっさりともたれない。時折出てくる賄いご飯が、とても美味しそうだった。2026/01/18
蒼
31
「なずな」ちゃんの作者さんだ!と喜び勇んで手にしてみたものの、文章は「なずな」そのものもを感じさせられたけど、なずなちゃんに惹きつけられた吸引力を感じられずに読了に苦労した。賄いご飯は美味しそうで試してみたいとは思ったものの、726ページは鈍器にも思える厚みだった。2026/01/26




