出版社内容情報
最後の日に。最愛の人と。
致命的な心の傷を、人はいかにのりこえうるか?
ささやくような美しい声で、答えてくれる物語。
(川上弘美 / 作家)
旅をするとき、人は同時に、命を見つめているのではないか。
(西加奈子 / 作家)
この“旅”の体験と記憶は、いつまでも失われない。
自分もいつかは“最高の旅”を誰かとしてみたい。
人生に終わりはないのだ。
(小島秀夫 / ゲームクリエイター)
どこまでも続く青い空と海。エミルとジョアンヌは、南フランスの陽光きらめく中を旅していた。猫のポックとの出会い、海辺での穏やかな日々、ジョアンヌのマインドフルネスの教え。時にぎこちなく、時に深く心を通わせながら、2人と1匹は静かに時を紡ぐ。しかし、旅は穏やかなだけではない。進行する病と薄れゆく記憶はエミルをゆっくりと蝕んでゆく。残されたわずかな時間の中、互いの存在を支えに進むキャンピングカーは最期の目的地へ。失うことの痛みと、それでも生きることの輝きを描く、愛と再生の旅路。
爽やかな筆致で描く、命と愛、生きる喜びについての感動大長編後編。
【目次】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ももすけ
25
傷ついた男女のかかわり、命の尊厳、人は人生の最期をどこように過ごすのか。色々、考えさせられました。美しい自然や、新しい人たちとの出会いの中で、少しずつ心が癒され、お互いの繋がりを深めていく二人。ストーリーはゆっくり進むものの、確実に訪れるであろう最期の瞬間が分かっているからこそ、すべてが美しく、尊いものに感じられたのだろうか。2025/07/16
ぶぅすけ
16
26歳で若年性アルツハイマーとなり余命宣告されてしまった青年エミルは、愛する家族や友人に健常な自分だけを憶えていて欲しくて、SNSで同行者を募り旅に出ることにする。募集してきた女性ジョアンヌは黒尽くめの出立ちに、虚ろで無口。2人は多くを語らず旅に出るが少しずつうちとけていき、2人の過去が語られていく。未来がなく過去も忘れていくであろうエミルと、過去に囚われて未来に進めないジョアンヌの、内省と再生の物語。最後数ページのサプライズに泣いてしまった。良い作品だった。2025/07/13
ひろみ
12
2週間かけて上下巻読み終わりました。エミルとジョアンナの2人がフランスの自然豊かな、または古き良き街を旅して見せてくれて、素敵な出会いがたくさんありました。ままならない辛いことが2人どちらにもあるのですが、彼らは今を生きることで素晴らしい時間を過ごし、結末は予想以上のことでした。 そう。今を生きること。つい先月あるリトリートに参加しました。未来や過去を頭で考えるばかりでなく、今を感じること、それを体験できる場です。帰宅直後に届いた本が、また同じ世界に連れて行ってくれた偶然を嬉しく思っています。2025/07/09