出版社内容情報
きっかけは「古いフランス製の家計簿に書き込まれたゴッホの直筆かもしれない文書を訳してほしい」という依頼だった。
翻訳を進めながら、来歴を調べるうちに、この冊子の持ち主と、彼につらなる家族の系譜が浮かび上がる。
膨大な蘊蓄が回収されていく長野まゆみの仕掛ける圧倒的推理ゲーム。
〈解説:石沢麻依〉
内容説明
きっかけは「古いフランス製の家計簿に書き込まれたゴッホの直筆かもしれない文書を訳してほしい」という依頼だった。翻訳を進めながら、来歴を調べるうちに、この冊子の持ち主と、彼につらなる家族の系譜が浮かび上がる。膨大な蘊蓄が回収されていく長野まゆみの仕掛ける圧倒的推理ゲーム。
著者等紹介
長野まゆみ[ナガノマユミ]
東京都生まれ。1988年に『少年アリス』で第25回文藝賞を受賞。2015年には『冥途あり』で第43回泉鏡花文学賞と第68回野間文芸賞をW受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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エドワード
25
日本のある家から出てきたフランス製の家計簿。19世紀末と思われる家計簿には多くの書き込みがあり、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの署名があった…。短く激しい生涯を終えたゴッホ。果たして家計簿は本当にゴッホのものなのか?ミステリアスに始まる物語は、3冊存在する家計簿が全て贋作とすぐにわかる。しかし、ミステリーは終わらない。いくつかの家族の複雑な昭和史が語られ、重厚で軽い不思議な物語は、墨ときのこ、絵の具に金箔の入った絵本、メリー・シェリーに恩地孝四郎、小箱と鍵など、世界をめぐり、ひまわりの種で終わる終幕が秀逸。2025/07/01
みやび
15
古い家計簿に記されたゴッホのものと思しき手書きの文章。その翻訳を依頼された所から始まるこの物語は読み進める程に予想外の方向へ。よくある美術ミステリーかと思いきや様々な人物や物事の来歴や蘊蓄が至る所に鏤められている。途中難しくて置いてきぼりにされそうになったけどどれも興味深い逸話ばかり。当初の目的からは脱線しているような気がしていたけれどその情報が徐々に繋がり少しずつ家族の歴史が明らかになってゆくのは見事。今まで不思議でふわっとした長野作品しか知らなかったけどこの作品での長野さんの博識ぶりに舌を巻きました。2025/06/04
ソラ
9
【読了】E これは自分のせいだが散りばめられた蘊蓄は興味深かったものの、話としてはどうしても自分の中に落とし込められなくて、自分の中でバラバラのまま終わってしまった印象。2025/05/31
rinakko
7
堪能して大満足。事の始まりは19世紀のフランスで印刷された販促用の家計簿。余白に厖大な書き込みがあり、ゴッホの署名入りだった。語り手はその翻訳を恩師の河島から依頼されるが、依頼主曰く「真筆の可能性はひくい」。と、ここから先の展開は予想外な広がりを見せ、話がどこまで逸れるのかと思うとまたゴッホ周辺に戻る。宮沢賢治、初版『月に吠える』の装幀、メアリー・シェリー…縦横無尽な蘊蓄(主に河島)と、登場人物たちの関係とが綾に結ぼれていく様は流石の見事さだ。語り手の記憶から掬いだされた絵本『森のなかのお城』も忘れがたい2025/06/04
グレートウォール
7
雨である。という出だしでやられた。 ある書き込みを翻訳してほしいという依頼から、家族の過去に起きたことに繋がる展開にゾクゾクした。無数に散らばる蘊蓄に知識欲が刺激されるのだが、台詞の文章量に圧倒されつつニヤニヤが止まらない。しかも登場人物たちの人間関係が複雑でそれもまた魅力的だ。 あの有名なゴッホの直筆かもしれない、歴史に触れている感じは登場人物たちを通じて読者も体感する。そして、とにかく犬が可愛い。2025/05/25
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