出版社内容情報
第15回チャンビ青少年文学賞受賞作
貧しい中学生の男の子ジョンインが、黒猫に扮した悪魔「ヘレル」と過ごす不思議な一週間の物語。
ジョンインは両親のいない中学3年生。おばあちゃんと暮らしている。修学旅行費の家庭通知を受け取り“行けない”修学旅行に“行かない”選択をするジョンインを、クラスメイトのテジュたちが貧乏人だとからかう。
そんな彼らを避けて学校裏庭にあるゴミ捨て場でしゃがみ込んでいたジョンインは、不思議な黒猫に出会う。家までついてきたその黒猫は、休暇中に地獄から韓国に来ていた悪魔のヘレルだった。ジョンインの魂が食べたくてあの手この手で「欲」に気づかせようとする悪魔ヘレルは、「もしも」と願えば何でも叶えてあげると言い寄ってくる。
【目次】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
132
人間は想像できる生き物だが、想像しすぎては道が屈折してしまう。食べることが先で道徳はその次だ。その現実を受け入れたジョンインが、限られた選択肢の中で祖母と必死に生きている。周囲から受ける屈辱、近づいてくる黒猫が物語の主題となる。不運は目を閉じても消えないが、幸運は消えてしまう。人間の意識とはそんなもの。欲望に溺れた者は数多の扉を開けても欲望しか見つからないが、傷つけられた者は夜も闇も眩しく感じる。辛いときに辛いと声に出せれば、苦悩した先に強さがあること、今日が明日へ明日が未来へとつながっていることを知る。2025/09/13
ゆのん
42
主人公は祖母と2人で貧しい暮らしをしている中学生の少年。週に3日バイトをし、古紙を拾っては売りに行く生活。そんな主人公が出会った一匹の黒猫。この黒猫の正体は休暇中の悪魔。主人公の願いを叶えると様々な誘惑をするのだが…。中学生なんてまだまだ子供なのに、可哀想になる位現実的で、夢どころか希望も持たない。『辛い』と言葉に出す事もなく食べて生きていく事だけを考えている。頭が良くて、道徳心も高い少年の心情がとても無理しているように感じて手を差し伸べたくなる。主人公の心や思いの変化がリアルに描かれている。2025/04/22