出版社内容情報
「ただ普通でありたかった」
誰か教えてください。
ぼくはどう生きればよかったのでしょうかーー。
三通の手紙に刻まれた魂の叫びが、現代の精神的堕落をあぶりだす。
中学受験、トー横、起業サークル、悪徳コンサル、闇バイト。
「普通」が壊れた時代に漂う「自己本位」への誘惑。
【あらすじ】
ある青年から届いた手紙には、幼少期から「普通」を願って生活を送ってきたことが書かれていた。普通の家庭、普通の教育、普通の交友関係。多少の挫折はあっても、彼は「普通」の軌道に乗り続けている--はずだった。今、彼はとても困難な状況にいる。どこでそうなったのか。どうしてそうなったのか。両親が不仲だからか、トー横に行ってしまったからか、それとも大学時代の起業サークルが原因か、それとも重くのしかかる奨学金のせいだろうか。三通の手紙があぶり出すのは、あらゆるものが可視化された現代社会にはびこる精神的幼稚さと、その行く末。?
ぼくだけが悪いのでしょうか?
見えますか?この暗黒が。
内容説明
「ただ普通でありたかった。」中学受験、トー横、起業サークル、悪徳コンサル、闇バイト。「普通」が壊れた時代に漂う「自己本位」への誘惑。誰か教えてください。ぼくはどう生きればよかったのでしょうか。三通の手紙に刻まれた魂の叫びが、現代の精神的堕落をあぶりだす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
140
『普通』って何だろう。本作もまたその思いを人差し指で突き付けて来た。他人に答えを求めるな!誰に承認してもらいたいんだ!嗚呼、イライラもやもやする第一の手紙と第二の手紙あってのこれだ。ドキドキする第三の手紙だ。ここを読ませるために月村さんは酷だね。何処かでそっち側だったかもしれない時代を越えて今、『普通』を生きてる私を試してる?堕ちていく恐怖、底が無い不安、何処かで違う選択があったはずだが、それは後になって気付くのだ。冷静に振り返る川辺優人が逆に怖い。命を以って償うのも違う気もする。これが普通の底なのかー2025/05/22
ナミのママ
92
川辺優人という青年がある場所から出した3通の手紙で構成された作品。そこには生い立ちと現実社会に対する疑問が綴られている。しかし読後には、後味の悪い薄ら寒さを感じるのはなぜか。第一の手紙で綴られる幼少期から高校受験まで、集合体の中で上でも下でもない普通であり続けようとした姿。悪い仲間との関わりも「仕方ないよ」とまだ思える。そこからなぜ変わっていったのか。アイデンティティの確立に失敗したと終わらせるにはあまりに重い結末。最終章を読み、主人公の未熟さだけでなく時代にも怖さを感じた。2025/05/13
ケンイチミズバ
80
一貫して普通の人を目指していたはずが、それは独りよがりで普通ではない方にカテゴライズされる。フィクションのためお約束のように闇バイトに墜ちた青年。彼の独白と聞き役のジャーナリストの構図は貫井徳郎氏の愚行録だな。反省が少なく、概ね社会批判という言い訳で社会の影響、育った環境に影響を受けるのは当然だ。両親に問題があり、学校や教師にも問題がある。が、どこにも問題のない社会などこの世界にあるだろうか。問題があるのが普通だ。昔との違いはスマホの悪影響の大きさか。歪んだ社会が日常の普通というのもダメな国なのだけど。2025/04/28
のぶ
71
川辺優人という男の生い立ちから始まる自叙伝。川辺が書いたという三つの手紙から構成される本だが、第一の手紙では淡々と読み進めて、第二の手紙の後半で急にジェットコースターのように坂を登り始め、第三の手紙で奈落の底に落ちる。普通の家庭に育ち、普通に暮らしていたものが、なぜこんな人生になってしまったのか考えてしまった。分岐点で最悪の決断を繰り返し、気がついたら後戻りできないところに来てしまって、こんな事になるというのは、やはり自分の中に何か甘いものがあったのではないかと思う。普通に起こりうる事かもしれない。2025/05/10
hirokun
48
★4 月村さんは、社会派ミステリー小説が好きで新刊を中心に読んでいる作家さんだが、本作も非常に時代の流れに沿った問題意識で提起された作品だった。私も闇バイトで犯罪に加担する人たちの心情が理解出来なくて、新聞等で報道がなされる度に違和感を感じていた。ある意味「普通」を望んで生きてきた人たちが、偶然が重なる中で、闇バイトにまでたどり着く怖さを理解出来た様な気がする。「普通」の先に行き着く人生の泥沼、「底」を垣間見たようだ。文章自体は分かり易いのだが、淡々とした語り口の為か、物語に深さを感じ難いのは私だけか?2025/05/26