出版社内容情報
■八十年前のあの夜、東京で何が起こっていたのか? 圧巻のドキュメント
保阪正康氏推薦!
「戦争を体験し、思索し、表現する文士たちの言葉は第一級の証言である」
■荷風が、谷崎が、向田邦子が目撃した
「戦争」の姿が生々しく蘇る
■一夜にして十万五四〇〇人が失われた惨劇!
僕は巨大なB29が目を圧して迫まってくるのを見た。銀色の機体は、地上の火焔を受けて、酔っぱらいの巨人の顔のように、まっ赤に染まっていた。
──江戸川乱歩
■彼らの著述によって東京大空襲の惨劇を再構成するこの労作から、
私たちは戦争の非人間性を改めて知らされることになる──保阪正康(歴史家)
内容説明
一夜にして十万五千四百人が失われた惨劇!僕は巨大なB29が目を圧して迫まってくるのを見た。銀色の機体は、地上の火焔を受けて、酔っぱらいの巨人の顔のように、まっ赤に染まっていた。
目次
昭和20年、東京に住んでいた作家たち
1 焼尽
2 劫火
3 空爆
4 地獄
5 日記
6 鏖殺
7 戦慄
8 終結
著者等紹介
西川清史[ニシカワキヨシ]
1952年、和歌山県出身。上智大学外国語学部フランス語学科卒業後、1977年に文藝春秋に入社。「週刊文春」「Number」編集部を経て「CREA」「TITLe」編集長、副社長を歴任。2018年に退職後、瘋癲老人生活を満喫中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kinkin
81
昭和20年の東京大空襲。作家や評論家他が体験したその様子が書かれた本の中から抜粋したもの。半藤一利さんの体験談は以前読んでいたが、相当ひどかったことがよくわかる。死者数で比較するのは失礼だが2011年の東北の地震の時は死者2万人、この空襲では10万人。落とされた爆弾も焼夷弾がほとんどと言われていたが普通の爆弾も多かったこと、熱というのはある温度になると白熱と言って自然発火すること。文人たちの多くの書物や資料も焼けてしまったという。実際にB29の残骸を見た人は、これでは負けると確信したという。図書館本2025/05/17
Willie the Wildcat
62
筆力故の(皮肉にも)豊かな表現力が描く戦争の現実。正に、価値観・既成概念を超越する地獄絵。様々な形状の遺体や、人体から溶け出した脂などが齎す「感情の真空状態」。母の遺言を経て”23年の歳月”を必要とした宗左近も、究極のその一端。自然との対照性、「鳥も鳴かない、青い草も見えない本郷」vs.「谷中で咲き誇る満開の桜」。戦争を繰り返す人間の愚かさを暗喩した感。多様な”覚悟”のエピソードの中、向田邦子の父の「最後の晩餐+昼寝」の件は印象的。昭和の”威厳”を保ちつつ、親の本質を垣間見た感。2025/09/20
ちさと
24
昭和20年、10万人の犠牲者を出した東京大空襲の下、文士達が日記や随筆に書き残した戦争を届けたもの。内田百閒は番町に、山田風太郎は目黒に、堀田善衛は洗足、坂口安吾は蒲田、古川ロッパは下落合に、半藤さんは向島にいた。 3/18、被災地に巡幸した昭和天皇をばったり目撃した時の堀田善衛の苦悩にとても共感した。小説家の日記は嘘ではないけれど、いつか読者に読まれることを想定した、やはり小説に近いものになると思う。でも堀田のこの日の日記には「本心」が書かれている気がした。2025/06/16
hippos
18
広島・長崎への原爆投下はもちろん、日本の主要都市への空襲は(軍同士の)戦闘でもなけれな軍事施設への攻撃でもなく、市民を狙った「非人道的」な行為。「戦争を早期終結させるため」という米国の主張は強弁で実は米国自身もそのことを自覚しているのだと思っていた。しかし、本書のルメイ少将の章を読み、また先のトランプ大統領の発言を考えるともしかして本当にそう信じているのか?と思うに至った。まったく恐ろしいことだ。 母親を見捨て逃げるしかない状況、父親が目前で撃ち抜かれる、地獄である。2025/07/08
hitotak
12
作家、評論家、役者たちが、東京大空襲について回顧した文章や当時の日記等をまとめた一冊。炎と煙の中で逃げ惑い、沢山の死体を目撃し、家を焼かれ、身内を亡くすという痛切な記録である。構成した筆者は、かつて多くの人が亡くなった橋や寺、ある詩人が母親を見捨てて逃げ、次の日死体を見つけた路地を訪れて空襲の痕跡を探しているが、今はただ穏やかな風景である。空襲で自宅が全焼して疎開するが、行く先々で何度も空襲に遭遇する永井荷風、敵の本土上陸前に我が子を殺す決意をしたためた海野十三の日記などは特に当時の異常な状況が伝わった。2025/05/14




