出版社内容情報
江戸時代。両親を亡くした少年・心太は、辻占いをしていた。ある日出会った僧侶のせいで幽霊が見えるようになり…。人との出会いが胸を打つ、感涙必至の時代小説の傑作
【目次】
内容説明
江戸で長屋住まいをする心太は、十歳の時に母を病で亡くしてしまった。以来、いつか母の幽霊に会えると信じて、永代橋の袂で、母が得意だった辻占売りをして暮らしていた。そんなある日、母への思いを引きずり続ける我が子を見かねた父が、辻占売りをやめるように諭してきた。口論になった末に心太は、「おとっつぁんなんか、だいきらいだ。いなくなっちまえばいい!」と叫んでしまう。そうしたら、なんとその日本当に父が事故で死んでしまった…。深く後悔する心太のもとへ、とある坊主が現れ、あの世とこの世の境目へと導く。すると、本当に心太の目に幽霊が見えるようになって―。天と地、生者と死者が交わるとき、小さな奇跡が起こる。心に傷をかかえるすべての人へ届けたい、人情あふれる時代小説。
著者等紹介
麻宮好[アサミヤコウ]
群馬県生まれ。大学卒業後、会社員を経て中学入試専門塾で国語の講師を務める。2020年、第1回日本おいしい小説大賞応募作である『月のスープのつくりかた』を改稿しデビュー。2022年、『恩送り 泥濘の十手』で第1回警察小説新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
127
カバーの心太・・御髪を確認するまで女の子だと思った。両親を相次いで亡くし母がやっていた辻占売りで日々を暮らす心太。生前最後に父に放った言葉を後悔して、鬼心和尚との出会いから霊が見えるようになるのだが・・麻宮さんの描く子どもは今作でも「頑張れっ!」と肩入れしたくなるのだ。心太の成長の物語を通して親子愛がひしひしと切なく好い。思いを残し彷徨う者たちと関わり合い、悩み、迷い、理解することで沢山の気付きを得る心太。今を生きる意味・・最後の第五章が特に良かった。またいつか心太に会いたいよ。2025/08/14
ちょろこ
118
心打たれた一冊。時は江戸時代。両親を亡くした少年の心太は自責の念を抱えながら辻占いをしている、この境遇に何とも心が痛むスタート。そんな彼はある日、一人の僧侶と出会ってから幽霊が見えるようになる。といってもおどろおどろしさとは無縁、せつない交流に心が沁みる連続だった。あの世とこの世、移ろう魂への彼の手の差し伸べが自分自身へと重なりゆく姿に何度も心打たれた。と同時に言葉に宿る思い、心のありよう、今の大切さを改めて噛みしめずにはいられない。ずっと霧の中で探していた答えをしっかりと掴んだ心太は誰よりも強く優しい。2025/08/14
タイ子
83
麻宮さんの作品に登場する子供たちはいつもながらに愛おしい。主人公・心太は父親と2人暮らしだったのだが、その父親も事故で急死する。その朝、父親にかけたひどい言葉が心太にとって胸の中でわだかまっていく。もう一度会いたい。辻占売りをしながらそれだけを願う心太の前に現れた和尚が彼を彼岸の手前に連れて行ってくれた。その日を境に心太に見える死者の姿。いろんな事情を抱えて彼岸に渡れない霊たちと心太の交流が始まる。天と地の間にいる今の自分。出会いは何かしら意味があるもの。少年の生きる意味と切なさがじわりと胸に響く物語。2025/08/14
itica
72
母を病いで亡くし、やがて父も事故で亡くした11歳の心太は、辻占売りをしていたある日、奇妙な和尚との出会いにより霊が見えるようになる。生者、死者との関わりから生きる意味を学んで行く心太。ああ、深い。深いなあ、人生は。迷いながら悩みながら、でもしっかりと自分の足で歩いて行く心太の明日が見えるような終わり方にほっと一息。 2025/08/04
ゆみねこ
71
両親を亡くした心太は母が生業にしていた辻占売りをしていた。ある日、不思議な坊さんと出会い、あの世とこの世の境目へ導かれる。その日から死者を見ることが出来るようになった心太に起こった様々な出来事。出会いと別れを通して心太の成長が描かれている。2025/08/21