出版社内容情報
第171回芥川賞受賞「バリ山行」に先行する著者デビュー作。第64回群像新人文学賞・優秀作が待望の単行本刊行。
本社からの命令で何としても期日までに倉庫を建てなければならないのに、犬を連れた隣地の男・カメオがたちはだかる。不条理な可笑しみに彩られたデビュー作。
内容説明
誠実さと善意、ペーソスに満ちた令和の犬文学。神戸の物流倉庫に勤務する高見は新倉庫建設の工程管理を任されるが、建築予定地の隣地に住む犬連れの男が何かと工事現場にクレームを入れ、勝手に朝礼にも参加するようになる。その男自前のヘルメットには「亀夫」という名前が書かれていた。
著者等紹介
松永K三蔵[マツナガケーサンゾウ]
1980年生まれ。関西学院大学卒業。六甲山麓を歩くのが日課。2021年、本作「カメオ」で第64回群像新人文学賞優秀作を受賞しデビュー。2024年、第2作「パリ山行」で第171回芥川龍之介賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青乃108号
180
●前半/主人公が担当建築現場の隣家に住む、亀夫という名のクレーマーから受ける理不尽な妨害による抑圧。⇒亀夫の死により解放。●後半/亀夫の死去後、押し付けられた亀夫の飼い犬カメオ(笑)を、ペット禁止のマンションで飼わざるを得なくなった主人公が住民・管理会社からジワジワと疑惑を受ける抑圧。ラスト、カメオのハーネスを解き放ち、ロードバイクで疾走する場面で終わる。⇒解放による解放(笑)。ストレッサーから受けるストレスと、ストレスの解放の物語だった。世間はゴールデンウィークって浮かれてるが、俺は無関係に連勤。抑圧。2025/04/30
NADIA
96
『バリ山行』のK三蔵さんの作品だ。そりゃ読むよね。面白いもん。この作品の主人公はロードバイクが趣味の断れないお人よしタイプの中間管理職・高見。その他の登場人物は仕事場の隣に住むクレーマー中年男・亀夫。それからその不気味な飼い犬。あとは無視してもいいかな。あ、亀夫のお姉さん(結構性悪)は鶴子さんという。鶴と亀・・・(笑) 成り行きで預かった不気味な犬と心を通わせるいい話と思わせながら、まさかの展開に驚き。さすがバリ山のK三蔵さんだ。そして迎える最後の場面は愉快で爽快だ。そうか、その名前を襲名するのか(笑) 2025/03/11
道楽モン
88
芥川賞受賞後第一作ではなく、遡っての『群像』新人賞受賞作。つまりは本作がデビュー作だ。芥川賞の『バリ山行』も、純文学としてはかつてない読みやすさと面白さであったが、その萌芽はすでに本作で発揮されていることに驚いた。修練の結果にたどり着いた現在ではなく、作者が有している基本的なスタンスがこの路線ということで、次作を含めた作家としての展開がますます楽しみとなった。主人公の葛藤は、昔ならば何の感傷も挫折感も得られぬものだ。時代の変化と価値観の同時代性を有している今の読者にとっては、共感できる問題かつ爽快な結末。2024/12/16
fwhd8325
86
カメオというのは、主人公の職場に来るクレーマーの名前であり、そのクレーマーが飼っていた犬につけた名前でもある。この物語でこの関係性はとても重要です。主体性があるのかないのかはっきりしない主人公は、断れないままクレーマーの死によって、その犬を飼う羽目になる。次第にたまっていく主人公のストレス。とてもリズミカルで面白い。そして、切ないほどの優しさがとても痛々しく感じます。2025/03/16
pohcho
72
仕事で関わったクレーマーの人が突然亡くなって、遺された飼い犬を一時的に預かることになった主人公。一人暮らしのマンションはペット禁止。次第に近所の目は厳しくなるし、遺族には連絡つかなくなって、そのうえどうやら闘犬種らしく、日がたつごとに犬はたくましくなっていき・・。元の飼い主の名前からカメオと名付けた犬は一体どうなってしまうのか?どことなくヒヤヒヤしながら読んだけど、とても面白かった。ロードバイクの疾走感と皆で犬の名を叫ぶラストがいい感じ。2025/01/22
-
- 電子書籍
- 手なずける公女様【タテヨミ】第23話 …