出版社内容情報
その〈空洞〉から、すべては始まった。
天下の奇書か、物語の起源か?日本最古の大長篇「うつほ物語」の謎を、光源氏が解きあかす。
「平家物語」を全訳した著者が、一千年の日本文学史を超絶マッシュアップ。歴史を現代につなぐ驚異の新作!
京の都の政治抗争を逃れ、みずから須磨の海辺へと流寓した光源氏。侘び住まいに携えたのは父帝ゆかりの七絃の琴と、
七絃の琴の一族を描く大長篇「うつほ物語」の第一巻だった。満月の宵、徒然なるままに「うつほ」の最終場面を墨絵に描いた光源氏は、その巨大な物語の迷宮を遡り、九枚の物語絵によって読み解いていく――。日本物語文学史の豊饒なる起源を、現代に再生させる冒険の書。
内容説明
京の都の政治抗争を逃れ、みずから須磨の海辺へと流寓した光源氏。侘び住まいに携えたのは父帝ゆかりの七絃の琴と、七絃の琴の一族を描く大長篇「うつほ物語」の第一巻だった。満月の宵、徒然なるままに「うつほ」の最終場面を墨絵に描いた光源氏は、その巨大な物語の迷宮を遡り、九枚の物語絵によって読み解いていく―。日本物語文学史の豊饒なる起源を、現代に再生させる冒険の書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
139
古川 日出男は、新作中心に読んでいる作家です。本書は、源氏物語の輝き&光を吸収するようなブラックホール的なオマージュ小説でした。 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=00003990092024/12/04
がらくたどん
56
須磨だ浜辺だロケハンだ♪お屋敷セット宮中ラブに少々お休みしていた大河視聴、録画で追いつき再開したら須磨の浜辺を紫式部が爆走する爽快映像!籠を破り外の世界へ羽ばたいた。大河のお陰で大好きな平安文学関連の現代語訳・小説・解説が再版されたり新規に上梓されたりと嬉しかった今期もあとわずか。最終盤は古川さんで締めようかと。そう「須磨」です。右大臣一派の圧迫が強まる中、帝に寵愛される右大臣の娘との不倫がバレてガチ処分される前の須磨退去。身から出た錆とは言え、鄙の閑居で光源氏が絵筆をとる。描くは十枚の「うつほ」の物語♪2024/11/26
rosetta
30
★★★✭☆古川節の文体は読むのに体力がいるから長編だときつい。このくらいの中編が味わうに丁度いい。空洞とはうつほ、すなわち宇津保物語、須磨に逼塞した光源氏が宇津保物語を絵巻物に描くという趣向。二つの物語が交互に語られ、時に現代の作家本人が顔を出す。古川日出男と古典文学は相性がいい2025/03/10
ハルト
12
読了:◎ 「うつほ物語」と「源氏物語」が交わい、うつほを超えた空洞な物語。虚のように掴みどころなく、するすると伸びる竹のように手が届かない。けれどそれはメタ的に存在していて、十二の秘琴である七絃の琴の音色のように、物語の中にだけある幻の音のように存在している。現し世の月の記憶の重なり、物語世界の光源氏はうつほを想う。正直読み切れたという感触はないのだけれど、それでも文章の幻惑さにするすると取り込まれるよう読み進められた。2024/12/23
冬薔薇
3
須磨に移り住んだ源氏はうつほの物語を墨絵にする、ラストからその始まりへと。七弦の琴とあて宮の長大な物語を遡る。歯切れの良い文は独特で読みやすい。2024/12/14