出版社内容情報
第171回芥川賞候補作。古くなった建外装修繕を専門とする新田テック建装に、内装リフォーム会社から転職して2年。会社の付き合いを極力避けてきた波多は同僚に誘われるまま六甲山登山に参加する。その後、社内登山グループは正式な登山部となり、波多も親睦を図る目的の気楽な活動をするようになっていたが、職人気質で職場で変人扱いされ孤立しているベテラン社員妻鹿があえて登山路を外れる難易度の高い登山「バリ山行」をしていることを知ると……。
「山は遊びですよ。遊びで死んだら意味ないじゃないですか! 本物の危機は山じゃないですよ。街ですよ! 生活ですよ。妻鹿さんはそれから逃げてるだけじゃないですか!」(本文より抜粋)
会社も人生も山あり谷あり、バリの達人と危険な道行き。圧倒的生の実感を求め、山と人生を重ねて瞑走する純文山岳小説。
内容説明
会社も人生も山あり谷あり、バリの達人と危険な道行き。圧倒的な生の実感を求め、山と人生とを重ねて瞑走する純文山岳小説。2024年第171回芥川龍之介賞受賞。
著者等紹介
松永K三蔵[マツナガケーサンゾウ]
1980年茨城県生まれ。関西学院大学文学部卒。日々六甲山麓を歩く。2021年「カメオ」で群像新人文学賞優秀作を受賞してデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青乃108号
447
山岳小説は確か北杜夫の短編で読んだぐらいで、情景描写がさっぱり掴めず苦手だった。本作はタイトルからバリ島の山登りの話かしらん、ぐらいに何も知らずに読み始めたのだが、やっぱり山の情景描写は解り辛い。バリはバリ島のバリではなくバリエーションの略。わざと規定のルートを外れ、自分の勘を頼りに藪に分け入り、絶壁に食らいつき、1歩間違えれば滑落死。そんな山行に取り憑かれた男。彼は何故その様な無茶をするのか、その訳を知りたく思い彼に同行する男。男も又同じ道を。バリ山行は人生そのものだ。バリ辛いばい。生きるってこつぁ。2025/01/11
starbro
424
第171回芥川賞受賞作・候補作、オーラス(5/5)、今回は受賞作です。松永 K三蔵、初読です。最初巴里五輪だからパリなのかと思って良く見たら、パリではなくバリ、それではインドネシアのバリ島かと思いきや、全く関係ありませんでした(笑) 本書は、中小企業登山部山岳小説でした。純文学というよりもエンタメ小説に近い気がしました。面白くなくはないですが、私が選考委員だったら、本書を推しません。 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=00003982072024/08/30
FUKUSUKE
334
登山道として整備された道を歩くのではなく、独自のルートを求めて崖を登り、沢を渡り、藪漕ぎをしながら径をつくり進んで行く。バリエーション山行とは、上手く名前をつけたものだ。田舎の山で似たようなことをしたことがあるが、怖くて長時間進むのは無理だった。熊が出るし、水辺にマムシの巣穴が無数にあったからだ。でも、藪漕ぎをして黙々と進んでいると、正に切り拓いていく感覚があった。生と死の間に身を投じて様々な困難と向き合って前に進み、誰かが作った道では知り得ない領域に辿りつく。誰にも真似できない人生はバリ山行に似ている。2024/08/08
道楽モン
323
オモロイ純文運動を宣言、実行の作者。純文学としては判りやすい文体でテンポも良い。生きる実感を得る為の道なき山登りに、仕事・職場・家庭を重ねる構図、次第に揺れてゆく主観、思わぬ展開という形式は、オーソドックスながら王道で説得力がある。登山場面の臨場感が素晴らしく、読んでいて脳内登山体験できる。MEGADETHさんは主人公に登攀時に歓びを、下山時に度を超えた異様な恐怖を与えてくれる存在。この対比が効果的で、文字通りオモロイ純文学を実感した。本作を強く推した芥川賞審査員の彗眼を信じたい。次作がとても楽しみだ。2024/07/31
tetsubun1000mg
257
リストラから転職した住宅建設会社の日常からスタート。 日頃から飲み会などの付き合いも必要かな?と参加してみて登山会に誘われる。 参加後に登山会は盛んになるも、二代目社長の方針転換から下請け業務メインと変わっていくが上手くいかず会社の雰囲気が悪くなる。 そこで、一人でバリ山行をする変わり者の妻鹿に同行を申し入れる。 そこで遭難しそうなめに合うが、死と仕事について思い悩む。 危険なバリ山行のシーンは臨場感がありヒリヒリとした恐怖感が伝わってくる。 芥川賞作品にしては読みやすく、「我が友、スミス」に通じる印象。2024/09/19
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