出版社内容情報
空手道場に集まった胸に同じ形の青あざがある頑強な三人の男たち、路地に生まれたタツヤ、在日韓国人二世のシム、アイヌモシリのウタリ。そのアザの形に旧満州の地図を重ね見た右翼の大物フィクサー槙野原は三勇士による満州国の再建を説く。日本の共同体のなかにひそむうめき声を路地の神話に書きつづけた中上健次が新しい跳躍を目指しながらも、「群像」連載中急逝し、未完に終わった傑作大長篇小説。死してなお生き、未完ゆえに無限増殖する壮大なる中上サーガ。
内容説明
空手道場で出会った胸に同じ形の青アザがある強靭な三人の異族たち、路地に生まれたタツヤ、在日韓国人二世のシム、アイヌモシリのウタリ。アザに旧満州の地図を重ね見た右翼の大物フィクサー槇野原は三勇士による満州国再建を唱える。共同体と風土に潜むうめきを路地の神話に書き続けた中上が新しい跳躍を目指しながらも未完に終わった遺作にして最大の長篇小説。
著者等紹介
中上健次[ナカガミケンジ]
1946・8・2~1992・8・12。和歌山県生まれ。新宮高校卒。熊野を舞台にある血族と路地と呼ばれる共同体を中心に据えた「紀州サーガ」とも呼ばれる土着的な独自の作品を数多く発表した。1976年『岬』で第74回芥川賞を受賞、戦後生まれ初の芥川賞作家となる。77年『枯木灘』で毎日出版文化賞、芸術選奨文部大臣賞新人賞を受賞。90年からは熊野大学を開講。ガンのため故郷新宮に戻り逝去。享年46(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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真琴
12
胸に青アザを持つ出自の異なる男たちの物語で、中上健次未完の長篇小説(本書では解説含め950P) 戦前から敗戦そして現代を通して、天皇や沖縄、アジア、戦争責任といったことを考えながら、日本人である前にアジア人としての自分自身を見つめたいと思ったのは初めてかもしれない。2024/07/08
フリウリ
8
図書館の新刊コーナー。満州を軸に南西諸島の孤状連帯に反体制を見出す構想。アウトローのカーニバル小説、風刺小説で、水滸伝や八犬伝を想起しました。ここまで壮大な物語に現実感があるのは、やはり先の戦争をめぐる「大きな物語」を踏まえてのこと。この国の急所を確かに突いていて、右翼や左翼を自認する人たちも読むといいと思います(読むわけないか…)。著者本人とおぼしき嗜虐的でおちゃめなシナリオライター、そして夏芙蓉の甘い香りが、効いています。解説は真面目(過ぎ?)な文芸批評で、最近の文庫解説とは一線を画しています。92024/08/07
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