出版社内容情報
第24回ちゅうでん児童文学賞で大賞をとった志津栄子の最新作!
トマトを区別できない、肉が焼けたタイミングがわからないことから、色覚障がいが発覚し苦しむ信太朗。母親は悪気なく「かわいそう」といい、試すようなことをしてくるし、症状を知らないクラスメイトから似顔絵のくちびるを茶色に塗ったことを馬鹿にされ、すっかり自信を失ってしまう。眼科の先生は個性のひとつと言ってくれるけれど、まわりがそうはとらえてくれないし…。
学年が上がり、クラス担任が変わり自分自身に向き合ってくれたことで、信太朗は自分の目へのとらえ方がすこしずつ変わっていくことに気が付く。
内容説明
「あれ、あれれ。おまえ、チョコレートを食べたのかぁ」ぼくの絵を見て、最初に笑ったのは足立友行だ。「口にチョコレートがついてるよ」口にチョコレートがついているって?ぼくは自分の描いた似顔絵をまじまじと見た。これ、口の色じゃなかったのか。―自分の「世界の見え方」に向き合い、自分なりの「光」を見つけていく物語。第24回ちゅうでん児童文学賞大賞受賞作家の最新作!
著者等紹介
志津栄子[シズエイコ]
2022年、『雪の日にライオンを見に行く』にて、第24回ちゅうでん児童文学賞大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
☆よいこ
94
児童書。色覚障害▽熟したミニトマトがわからない、焼き肉が生焼けなのがわからない、些細なきっかけから井上信太郎は色覚障害の診断を受けた。2年生の時に自画像を描いたとき赤い口を茶色に塗ったことを指摘されたのがトラウマになる。5年生の担任が「困ったときは助けを求めていい」と雰囲気づくりをしてくれて、信太郎は少しずつ自分の見え方を受け入れていく▽過保護な母親が少し心配だったけれど、よい終わり方でほっとしました。色覚障害は本人が気づいていない場合もあり、割といますね。2024.5刊2025/04/15
chimako
72
色覚障害を持つ小学生信太朗を主人公に 両親、祖父祖母、学校の先生や友だちを上手く配置した児童書。作者は還暦を過ぎて書き始めた人生のベテラン。なるほど。読みやすく、押し付けがましくなく、その中で親の心配や主人公の戸惑いや葛藤もしっかり書かれていて未来は明るく拓けている。色覚障害者の実際の見え方をサイトで見てもやはり良く理解できない。そこがもどかしいが決して「かわいそう」ではなく「特性」であり「特殊能力」として描かれていてはっとさせられた。若い先生が良い。特別扱いせず困らないよう一緒に考える。表紙画はどうか…2024/08/06
りらこ
19
とても良い!自分に何かあることを弱みとして傷口ととらえているうちは、前に進みにくいのかなと思う。色覚異常の子どもさんや、あと大人になってから職場などで何人も出会っているけど、きちんと言ってくれる(から知ってた)人ばかりだった。後半、絵を描き始めるところからの筆力がすごい。惹きこまれる。これ課題図書だけど、登場人物の心の動きだとかいろいろ捉える場所が多くて読解文にも向いている・・・とつまんないこと考えちゃったりして。2025/05/25
雪丸 風人
15
主人公は色覚障がいのある小学生。劣等感から、家でも学校でも不安を抱え日々を過ごしていた彼が、欠点と疑わなかった個性の強みを知り、目の色を変えて好きなことに邁進していきます。努力でどうにもならないことに少年が後ろめたさを感じてしまう描写が胸に迫りました。何とかできないのかと思わずにいられないほど。それだけに、終盤の展開にはハートをわしづかみにされましたね。彼の成長ぶりが思わぬ波紋を投げかけるくだりではこちらまで弾んだ気分に。後半に出てくる先生のふるまいも素晴らしいですよ~。(対象年齢は10歳半以上かな?)2024/05/30
もちこ
13
赤色がうまく判別できない色覚障がいを持つ信太朗。 眼科では「個性のひとつ」と言われたけれど、母親は「かわいそうに」と言って過保護になってしまう。それをうるさく感じるけれど、言い出せない信太朗。 学校でも色を判別できなくて、からかわれてしまう。 そんな信太朗の気持ちを慮って、さりげなく支援の手を差し伸べる平林先生の存在が、この作品の中で一番光っていた。 障がいを持っているかどうかなんて関係なく、自分の気持ちを素直に伝えることで、周りの人と安心できる関係を築けるということ。それをこの本で学ぶことができた。2024/04/02