出版社内容情報
島田荘司氏絶賛! 第16回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作!
市役所の市民相談室に勤務する六原あずさは、ある日、相談者の妻が密室から墜落死する現場を目撃してしまう。
被害者が死の間際に残した「ナツミ」という人物を追って、刑事である夫の具樹は操作を開始するが、その行方は杳として知れなかった。
一方で、あずさの元には不可思議な相談が次々と舞い込む。
施錠された納骨堂でひとつ増えた骨壷。高齢男性ばかりをつけ狙う怪しげなストーカー。
重なる謎の裏には、驚きの真相があったーー。
内容説明
松本市役所の市民相談室に勤務する六原あずさは、相談者の妻が密室から転落死する現場を目撃する。被害者が死の間際に呟いた「ナツミ」を追って、刑事である夫の具樹は捜査を始めるが、なかなか手がかりを掴めない。一方であずさの元には、施錠された納骨室でひとつ増えた骨壺や、高齢男性ばかりを狙うストーカーなど、不可思議な相談が次々と舞い込んで―。島田荘司選第16回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞。
著者等紹介
麻根重次[アサネジュウジ]
1986年生まれ。信州大学大学院で進化生物学を専攻し、その後現在まで公務員として勤務。2023年、本作で島田荘司選第16回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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タイ子
89
著者の麻根さんは長野県安曇野市職員らしく舞台となっている松本市周辺の描き方がいい。作品は殺人事件なので刑事が主人公ではあるけど、その刑事の妻が市役所勤務で何かと話題を仕入れてくる。何と言っても事件の目撃者が妻なのだから。様々な苦情や相談事が持ち込まれる役所の窓口。一見何の関係もないように思えた相談事が事件の渦中に隠れていたとか、ストーリー展開においてもしや、もしやと思わせてくれる推理の面白さ。役所の探偵気取りの男が事件の推理仕立てを披露しながら悦に入るこの憎らしさ。事件の果ての身勝手な欲望が醜い。2024/06/02
yukaring
73
密室で襲撃されたとおぼしき女性が窓から転落死を遂げる。施錠されたドアを開けても犯人の姿はなく鍵は彼女持っている1本のみ。彼女が言い残した「ナツミ」か唯一の手がかり。ある事情で転落死に居合わせた市民相談室に勤めるあづさと彼女の夫である具樹がお互いの知識を持ちより事件解決に挑む。高齢男性を狙うストーカーや納骨堂に忽然と増えた骨壺、相談室に寄せられる案件の広さには驚くばかり。そして一見バラバラのピースが最後に見事に一枚の絵になった時の爽快感。あづさ夫婦やあづさのセクハラ上司など登場人物たちのキャラも面白かった。2024/04/25
aquamarine
70
第16回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作。市民相談室の相談者の妻が転落死し、その真相を追う長編。相談室に舞い込む他の相談も、施錠された墓の納骨室に骨壺が一つ増えたとか、高齢男性ばかりを狙うストーカーが現れたりと、不可思議で目を離せない。相談室勤務のあずさの夫が刑事だということもあり分散した視点でも読みやすかった。小さなことが全て伏線で綺麗に糸をたどるようにして真相が導き出されるのは気持ちがいい。惹かれるタイトルなのに意味が薄い気がするのが勿体ないが、今後どんな作品を読ませてくれるのかとても楽しみ。2024/06/03
オフィーリア
62
衆人環視の下発生した密室からの転落死をベースに、いつの間にか納骨堂に増えてる骨壷・高齢者ストーカー事件といった市役所市民相談窓口に寄せられる日時的な謎が上手くリンクしたミステリ。少し地味な感は否めないが、それぞれの事件が結び付いていく解決編は鮮やか。2024/05/06
hirokun
54
★3 福山ミステリー文学新人賞受賞作ということで読み始めた。当然初読みの作家さんであるが、昔からの推理小説らしい落ち着いた感じの作品で、読み易い文章と相俟って一気読みした。エンドのタネ明かしの部分はきれいに纏まっているように感じた。派手さはないが久しぶりにゆっくり推理小説を楽しめた。2024/07/02