出版社内容情報
2022年本屋大賞第3位
第43回吉川英治文学新人賞受賞!
共感と絶賛の声をあつめた宝物のような1冊。
夫婦、親子、姉弟、先輩と後輩、知り合うはずのなかった他人ーー書下ろし掌編を加えた、七つの「小さな世界」。生きてゆくなかで抱える小さな喜び、もどかしさ、苛立ち、諦めや希望を丹念に掬い集めて紡がれた物語が、読む者の心の揺らぎにも静かに寄り添ってゆく。吉川英治文学新人賞受賞、珠玉の短編集。
ままならない、けれど愛おしい
「小さな世界」たち。
内容説明
夫婦、親子、姉弟、先輩と後輩、知り合うはずのなかった他人―書下しし掌編を加えた、七つの「小さな世界」。生きてゆくなかで抱える小さな喜び、もどかしさ、苛立ち、諦めや希望を丹念に掬い集めて紡がれた物語が、読む者の心の揺らぎにも静かに寄り添ってゆく。吉川英治文学新人賞受賞、珠玉の短編集。
著者等紹介
一穂ミチ[イチホミチ]
2007年『雪よ林檎の香のごとく』でデビュー。『イエスかノーか半分か』などの人気シリーズを手がける。『スモールワールズ』(本書)で第43回吉川英治文学新人賞を受賞し、2022年本屋大賞第3位となる。『光のとこにいてね』が第168回直木賞候補、2023年本屋大賞にノミネート(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Karl Heintz Schneider
152
少し前に読んだ「光のとこにいてね」ほどではないが350ページの大作。このページ数を見た瞬間、げんなりしてしまう。でも、そんな杞憂もどこへやら、あっという間に読了してしまった。本書は6編からなる短編集だが第二話「魔王の帰還」が良かった。誰もが恐れおののく巨躯の女性。でもその最奥に、ほの見える乙女ゴコロ。それを見守る弟の眼差しが優しい。さらに彼を見守るクラスメートの女子も。「勇者のもとへ、音を立てて帰れ、魔王」。ラストシーンの映像が立ち昇ってきて胸がジーンとなった。2024/03/15
ケイ
115
再読。同作者の2013年度の本屋大賞候補作を読む前に既読作を振り返り。2度目の方が心に響く。初読時にはどの短編にも感じた歪さが、人としての弱さや他人に向ける優しさとなって訴えてくる。みな、その出し方がストレートでなく、だから一見理解したがい。嘘をつくことや盗むことで、気持ちを表す登場人物たち。そうせずにはおられない心の傷が見えてきた。盗むことで父にあらわす表明。夫も仕事も未来の子供も自分の手から離れていってしまう女の気持ちは切ない。それぞれの短編が少しずつ繋がっているのだな。2024/03/18
涼
104
http://naym1.cocolog-nifty.com/tetsuya/2024/02/post-e216d5.html 破天荒なように見えて心優しい姉とその弟を描いた【魔王の帰還】が好きだったかな。2024/02/17
Willie the Wildcat
81
恋人、夫婦、母娘、加害者・被害者など、直接的な関係性を通して、主人公が心底の痛みと向き合い、一歩踏み出す。ネオンテトラが不要となる幸せ、気持ちで負けた過去との決別、自らの命と引き換えに家族を守る喜び、悲しみの伝承・理解者の存在、適量から真剣への回帰、そして、受動性から自主性への転換。直球の『魔王の帰還』、変化球の『愛を適量』は、受け止めやすい。一方、『花うた』は論理的に理解するが、感情的には難しい。『ピクニック』の二重・三重の母娘関係性が、主人公の置き方を悩ませる。”入れ物”、どうにもひっかかる言葉だ。2024/11/18
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
80
(2023-135)初読みの作家さんでした。本屋大賞第三位、タイトルや装丁からもっとほのぼのとした話かと思ったら意外にもシビアなお話が多かった。「スモールワールズ」と言う通り、描かれるのは家族や友人などの小さな世界。「愛を適量」は冴えない父親とトランスジェンダーの娘を、「ピクニック」は幼い子供を亡くした家族をファンタジックかつホラーテイストに、「花うた」は傷害致死事件の加害者と被害者の妹との往復書簡で綴るなど、様々な関係が色んな手法で描かれる。なかなか引き出しの多い作家さんだなぁと思いました。★★★+2023/11/11