出版社内容情報
第66回 群像新人文学賞受賞作!
この部屋の住人は、みんないなくなる? 都市の片隅にあるマンションの一室、408号室に入れ替わる住人たち――。奇想天外な物語が、日常にひそむ不安と恐怖を映し出す。
同じ部屋で前の時間が見えないまま孤独と恐怖を積み重ねていく構成で細部まで考えられていた。
理不尽さと暴力的な状況がスリリングで、多様な恐怖を描ける人だと思った。――柴崎友香
一連の奇想天外な考察は、インスタレーションと呼ばれる空間芸術の手法とも似ていて、
日常性からの逸脱を効果的に演出するにはうってつけだ。
――島田雅彦
ある〈部屋〉のみを舞台にすることで、作品の〈空間〉は限定されている。
が、前の住人、その前の……と過去を連鎖的に想像可能で、今後の住人という未来も延々の想像が可で、その意味で〈時間〉が限定されない。そこに越境のポテンシャルが満ちている。――古川日出男
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
312
とあるマンションの408号室に越して来たら、そして誰もいなくなった。群像新人賞受賞作で著者のデビュー作となる全4話の連作短編集です。男も女も鳥もそれぞれに事情は異なれど最後には無慈悲な運命を迎えていなくなります。この部屋に入る事で消えてしまう運命になってしまうのか、この部屋が不幸な人々を引き寄せるのか、どちらかはさだかではありませんが、派手さはないけど静かで不気味なホラー作品集ですね。著者は不運な人々に肩入れせずに同情や感情を完全に排して淡々と災厄の物語を描く名手だと思いますね。#NetGalleyJP 2023/08/22
ちょろこ
138
厭、な一冊。イヤ、嫌、厭…。とあるマンションの決して環境良好とは言い難い408号室。次々と消失する入居者の消失までを描いた作品は"厭"という漢字表現が一番しっくりくる。まるで見えない蜘蛛の巣にひっかかったような、ふわふわ〜と糸にひっつかれたような心理的な"厭"が終始つきまとう、そんな感覚。直接的な表現はないのにこの感覚にさせられるって不思議で、ある意味面白い世界観かも。最終話の奇抜さはこの部屋に独り取り残されたような気味悪さを運ぶ。スッキリ、清々しさとは無縁、陽当たり皆無。なのに気になるこの世界観。厭〜!2023/09/01
モルク
132
都市の片隅にあるマンション、その408号室の住人は次々といなくなる。引越をしてくると、郵便受けには溢れんばかりの前の住人の郵便物が。転居の届けもなく、管理会社も手をつけない。これは普通ではないよね。その時点で何かあると思わなくちゃ。出社する意欲を失くし3ヶ月仕事を休んでいる女、ナンパする男、友人に1週間文鳥の世話を頼まれた男、そして最後は…。最後の女がもともとの原因なのか。100ページほどであっという間に読むことができる。しかしそこには不穏な空気がたちこめる。2024/03/27
シナモン
127
入居した住民が消えていく408号室。不穏で不気味でゾクゾク…。淡々とした文章と静けさ。ラストの奇想天外さは味わったことのないインパクトだった。そしてあとを引く余韻。追いかけたい作家さん。とても面白かったです。2023/10/19
おしゃべりメガネ
121
『群像新人文学賞』受賞作品で、北海道出身作家さんがまた新たにデビューです。なかなかインパクトある作風で、ちょっとセンスが際立ってるかもしれませんね。とある集合住宅の'408'号室にて、繰り広げられる謎めいた短編集です。果たしてコレはホラーかサスペンスか、ミステリーかあらゆるテイストをブレンドしたある意味ノンジャンルな作品かなと。タイトルの'もぬけ'と果たしてなんなのか、意味はなどは読んでみてのお楽しみですね。これはまた注目したい作家さんがまた一人加わりました。これからの作品に期待したいですね。頑張って!2023/09/09