出版社内容情報
わたしたちには家族をめぐる秘密がある
母の不妊治療の失敗、凶暴な白い光と共に襲ってくる片頭痛。
しずくとタマキは、持て余した心を抱えて
縛られ地蔵に会いに行く――。
傷つき、傷つけ、思いあう。痛切な家族の愛のかたち。
「ふと脳裏に、幼い未発達の実が木から落下する光景が過りました。
どうして自分は彼らと同じ道をたどらなかったんだろう」
第66回群像新人文学賞受賞作!
内容説明
わたしたちには家族をめぐる秘密がある。母の不妊治療の失敗、凶暴な白い光と共に襲ってくる片頭痛。しずくとタマキは、持て余した心を抱えて縛られ地蔵に会いに行く―。傷つき、傷つけ、思いあう。痛切な家族の愛を描く。第66回群像新人文学賞受賞作。
著者等紹介
夢野寧子[ユメノネイコ]
1986年、東京都生まれ。東京女子大学文理学部社会学科卒業。「ジューンドロップ」で第66回群像新人文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
konoha
54
面白くてあっという間に読めた。少女の友情ものと思いきや、たくさんの世界を見せてくれる小説だった。フワッとかわいい文章の中に毒が潜んでいる。しずくの母は不妊で精神的に不安定。頭痛に悩むしずくはタマキに出会う。縛られ地蔵や飴玉が象徴的に何度も出てくる。丁寧に書き込まれ、映画のワンシーンのよう。終盤で「あなた」が出てきて、重い展開になるのが少し急で残念。あまり必要性を感じられなかった。2組の姉と妹、苦しみを抜けた家族の物語でもある。夕暮れの雨上がりのような空気まで感じさせる瑞々しい感性と世界観が新鮮。2023/08/19
えんちゃん
47
読友さんのレビューに惹かれ。かわいい表紙とかわいいタイトル。6月にぴったりかなって軽く読み始めたら、なんのなんの、ちょっぴり重ためな文学作品でした。やっぱり群像作品。デスマス調の文体で綴られるのはふたり少女の家族物語。キーワードは縛り地蔵。初耳。願いを込めて縛るんだとか。今を生きている彼女たちが幸せを感じられますように。そんな願いを込めて想像上のお地蔵さまに縄を縛りたくなる物語でした。2025/06/26
ぴよぴよ
42
ジューンドロップとは、梅雨の時季にまだ若い実が自然と落下する現象のこと。生理的落果。 装画のイメージに騙されたのは何冊目か(笑) ポップな表紙からは想像できないくらい重たくて、悲しい物語。二人の女子高生が背負っているものが重くて辛い。本来なら、周りの大人がもっと彼女たちをケアしなければならないのに、大人たちもそれどころじゃないほど疲弊している。 コロナ禍という状況も、彼女たちの閉塞感に輪を掛けて苦しかった。2023/11/24
いっち
36
主人公は女子高生。母は不妊症に苦しみ、父は母の再婚相手。友達は学校外。物語でよくありそうな家族もの。主人公は「あなた」に語る。「あなた」が誰なのかわからないまま進む。最後に「あなた」が誰かわかるが、読者に隠す必要はあったのか。一人称の語りで、重要なことを読者に伏せる書き方は、どうなんだろう。私は好きではない。「あなた」が誰かを言ってから(なんとなく途中でわかるし)、語ってほしかった。思わせぶりな書き方によって、読みにくさを感じたし、この作品が群像新人賞を受賞してなかったら、途中で読むのをやめていただろう。2023/08/06
tellme
27
可愛い装丁に反して中身は重い。淡々と語りかける「あなた」が誰かわかった時の怒りや悲しみに、読んでいて辛くなった。読むのに体力がいる一冊。2023/11/19