出版社内容情報
密室から忽然と消失した財宝の謎。
14年前の真実が明かされる
怒涛の30ページに目が離せない。
『方舟』で注目される作家・夕木春央の本質がここにある!
「あたし、まえはサーカスにいたの」
大正14年。莫大な借金をつくった樺谷子爵家に、晴海商事からの使いとしてサーカス出身の少女・ユリ子が取り立てにやって来た。
返済のできない樺谷家は三女の鞠子を担保に差し出す。ユリ子と鞠子は、莫大な借金返済のため「財宝探し」をすることにした。
調べていくうちに近づく、明治44年、ある名家で起こった未解決事件の真相とはーー。
内容説明
大正14年。借金に苦しむ樺谷子爵家に意外な取り立て人がやってきた。ユリ子と名乗るその少女は「財宝探し」による返済と、子爵の三女・鞠子を担保として預かることを提案する。財宝の在り処は?そして、14年前の未解決事件の真相とは?丹念に綾なされたミステリーと冒険の世界を、二人の少女が駆ける。
著者等紹介
夕木春央[ユウキハルオ]
2019年、「絞首商会の後継人」で第60回メフィスト賞を受賞。同年、改題した『絞首商會』でデビューした。近著『方舟』(講談社)は「週刊文春ミステリーベスト10 国内部門」の1位となるなど各方面から激賞された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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aquamarine
72
大正14年、樺谷子爵の三女・鞠子は、借金のカタに晴海商事の使いであるサーカス出身の少女・ユリ子に担保として差し出される。二人は借金返済のため財宝探しをするのだが…。明治44年に起きた密室での財宝消失事件も絡み、大正時代の少女たちのハードボイルドなストーリーに夢中になった。密室の謎や暗号などにもワクワクするし、謎が解けてみればあそこにもそこにも伏線が撒かれていたことに気づいてハッとさせられる。この頁数を一気に読んでしまうほど、とても面白かった。成長した鞠子の今後も知りたいし、ユリ子の活躍をまた是非読みたい。2024/05/02
よっち
39
大正14年。晴海商事からの使いとして借金の取り立てにやって来たサーカス出身の少女ユリ子。借金を返済のできない樺谷家は三女の鞠子を担保に差し出し、二人で莫大な借金返済のため財宝探しをする大正ミステリ。密室から忽然と消失した財宝の謎。調べていくうちに明らかになってゆく14年前にある名家で起こった未解決事件の真相。怖いもの知らずのユリ子と振り回される鞠子のコンビを軸に、関東大震災を絡めながら描かれる「絞首商會」と同じ世界観で、伏線を回収しながら大人たちを相手に堂々と推理してみせるユリ子の存在感が光っていました。2023/09/25
seba
29
時は大正、斜陽華族の樺谷家にやって来た借金取り立て人は、何と当家の三女を担保同然に宝探しへ連れ出し、その成果を返済に充てると告げる。時代の空気感にしては風変わりな導入だが、登場人物の行動原理が明快であるからか読みやすい。中でもやはりサーカス出身のユリ子から溢れる清々しいほどの全能ぶりは、嫌味が無く最後まで痛快であった。鞠子が発揮した筆力も、箱入りとは思えないほど処世術として立派なものであり魅力的。作中に登場する暗号も視覚的に解りやすく、面白みもあるため楽しめた。※正しい総ページ数は467(奥付まで)2023/10/26
mayu
27
「方舟」が気になっていた初読み作家さん。帯に没入のミステリーとあって手に取った。大正時代を舞台に子爵家に現れた借金取りの少女ユリ子と担保にされたお嬢様の二人が行方不明の財宝を探す冒険ミステリー。サーカスから逃げてきたというユリ子はあっという間に色々な事を難なくこなす不思議な少女。世界観がしっかり作られていて、この物語にこの少女ありというとても魅力的なキャラ。 気分転換に読むのに良いかもしれない。暗号や財宝の行方に冒険と飽きずに最後まで楽しめる一冊。2023/08/14
おうつき
26
デビュー作と同じ大正を舞台とした作品だが、主人公二人が少女であることや殺人ではなく宝探しを主題としていることもあって、随分雰囲気が違う。『時計泥棒と悪人たち』を読んだ時にも感じたが、冒険活劇的な要素がたまらない。宝消失の謎の逆説的な発想はこの著者らしい驚きがある。奇妙な暗号は絶対に自力で解くのは無理だと思いつつも、ワクワクさせられた。驚き没落名家に生まれた少女と、サーカスから逃げてきたという奇抜な少女の対比も面白く、成長物語としても楽しめた。この探偵役を一作で終わらせてしまうのはもったいないので続編希望。2024/06/05