出版社内容情報
「20世紀最大の哲学者」ハイデガーが生涯を賭けて問い続けた「存在への問い」とはどのような「問い」だったのか? 変容し続ける思索の跡を丹念にたどり、その最後にたどり着いた境地に迫る。また、近年「黒ノート事件」によってスキャンダルを巻き起こした悪名高い「ナチス加担」がいかなる哲学的見地からなされ、そしていかなる理由からナチス批判に転じたのかについても徹底的に解明する。「道であって作品ではない」――ハイデガー哲学の魅力と魔力を余すところなく捉えた力作。
内容説明
悪名高いナチス加担、「反ユダヤ主義」問題から、超難解で知られる後期の思索まで―「ハイデガー一筋」の研究者がすべて解明!
目次
序論
第1章 「存在への問い」の概要
第2章 前期の思索
第3章 中期の思索
第4章 ハイデガーのナチス加担
第5章 後期の思索
第6章 ナチズムとの対決
第7章 戦後の思索
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- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
南北
53
ハイデガーの哲学を『存在と時間』の前期だけでなく、中期や後期も含め、全体を概観した本。500ページ近い新書は読み応えがあった。ナチス政権下で大学の学長になったことや2014年に刊行された『黒いノート』が反ユダヤ主義とされて、批判されることが多く、近年ヨーロッパでは研究者もあまりいない状況が続いているようだ。第2次世界大戦の責任をすべてナチスに押しつけたドイツにとって忌避感しかないのかもしれないが、単なるレッテル貼りで研究しないという態度は到底学問とは言えない。ハイデガーの哲学を概観するには良書だと思う。2024/11/24
ころこ
51
ハイデガーの前期、中期、後期は変遷しており、特に後期思想は謎めいているといわれる。ひとつには良く読まれている前期の『存在と時間』において、前期から後期までを貫く「存在への問い」が現存在の分析にとどまっていることによって、特に日本での受容は人生論のように読まれてしまっているためだという。「存在への問い」は中期では「存在者全体」に、後期では「性起」「存在の真理」と呼ばれる。本来は真の神性に接近するためであり、後期を受動的で神秘主義的だと誤読して分かり難くしている。同じことの裏面が「黒いノート」や政治に接近した2023/10/11
原玉幸子
21
ハイデガーの真髄は『存在と時間』だけでは分からない、巷で言われている様なナチスの賛同者ではない、仏教と関連付けることの出来る思想もある等々、著者は、結構「えっ、そうなの」との切り口を提供してくれます。それでも、「存在者全体」「ピュシス」「フォルクの世界」ぐらい迄は何とか分かる気もするのですが、戦後ハイデガーが辿った「もの」や「四方界」等の解説には、「うーん」。難解で分からないというより、語る何かの用語や定義の言い替えばかりなだけと思うもので、ちょっともうハイデガーはいいかな、でした。(◎2023年・秋)2023/09/23
Ex libris 毒餃子
15
『存在と時間』を中心に語られがちなハイデガー理論を中期・後期を含めて俯瞰している良本。これを中心にして他の書籍にもチャレンジするのが良いかと思います。2024/10/26
Iwata Kentaro
13
ようやく読了。同じ話が延々と繰り返されるのでしんどい読書だった。がしかし、過去最高にハイデガーが我がほうに近づいてきた、という実感を得た本。ダーザインだのフェルファレンだの、キーワードが難解過ぎてそこでグルグル止まってたのだけど、そういう読み方がまずかったのかも。「時間」の意味もようやく腑に落ちた。2023/07/12