出版社内容情報
夏休み、お金がなくて暇を持て余している大学生達に風変わりなアルバイトが持ちかけられた。スポンサーは売れっ子心理コンサルタント。彼は「純粋な悪」を研究課題にしており、アルバイトは実験の協力だという。集まった大学生達のスマホには、自分達とはなんの関わりもなく幸せに暮らしている家族を破滅させるスイッチのアプリがインストールされる。スイッチ押しても押さなくても1ヵ月後に100万円が手に入り、押すメリットはない。「誰も押すわけがない」皆がそう思っていた。しかし……。
第63回メフィスト賞を受賞した思考実験ミステリが文庫化!
内容説明
私立狼谷大学に通う箱川小雪は友人たちとアルバイトに参加した。一ヵ月、何もしなくても百万円。ただし―“押せば幸せな家族が破滅するスイッチ”を持って暮らすこと。誰も押さないはずだった。だが、小雪は思い知らされる。想像を超えた純粋な悪の存在を。第63回メフィスト賞受賞の本格ミステリー長編!
著者等紹介
潮谷験[シオタニケン]
1978年京都府生まれ。本作で第63回メフィスト賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yukaring
68
〈押せば幸せな家族が破滅するスイッチ〉をあなたは押しますか?不思議な実験に参加することになった主人公・小雪。それはスイッチを持たされ、押しても押さなくても100万円貰えるアルバイト。普通に考えると誰も押すはずないのに・・。心の奥底の悪意は常識では測れない。幸せそうな家族やふざけ合う友人たち、仲睦まじい恋人同士など皆が額面通りではないかもしれない。人間の抱える闇や迷いを感じさせられるストーリーで複雑な人間心理がよく描かれていた。欲を言えば真相にもうひと捻り欲しかったがラストは綺麗にまとまり読後感はよかった。2023/07/28
夜桜キハ @呪術ギネス記録おめでとうございます
58
面白くて一気よみ。友人のセンスに驚愕(笑)押すメリットはないスイッチを何となく押してしまうという悪意の実験のために、集められた主人公たち。押す過程を描くかと思いきや、押した後の心理戦でした。主人公の考えが変わる瞬間や、押した本人が何を思ったのか。二転三転して、とっても面白かったです。実験主催者安楽さんの考えが変わる……とこも好き。宗教の話も入ってきて、途中やや胸糞悪いですが、エンドはちゃんとした形で良かったです。主人公の口調もクセになるのでサクサク読みやすく、久しぶりに当たりの本を引きました……!最高。2023/11/18
スカラベ
41
スイッチを押しても押さなくても報酬が与えられるアルバイト。スイッチを押すことによって、ある家族への援助が打ち切られ家族は破滅する。面白そうな設定で出だしは引き込まれた。ただ登場人物の心の中での葛藤が延々と語られるところがあり、焦らされた。もっとシンプルにストーリーの流れに重点をおいても良かった。宗教に関わる考え方は興味深かった。教祖が率いていた「安寧教」の教義が出てくるが、普通は教祖は他者を超越した立場にいるものだが、信者と同列にいるっていうのは斬新。犯人は推測できたので、もっと捻った仕掛けが欲しかった。2024/03/25
三代目けんこと
39
心情的に共感出来ない言動や行動が多く見受けられたが、「メフィスト賞」なので、、、とそれで片付けてしまう自分がいる。2022/09/25
井川浩
38
押すはずないだろう。しかしあえて自由な権利が与えられたら押してみたいと思ってしまうのが人間?はじめ想像するに、人間の極限の心理状態などがつづられているのかと思っていました。しかしながらそのスイッチは意外な状態で押されることに!宗教的な考え方の背景や、複雑な人間関係などじっくりと読んで理解することの楽しさと、意外な展開に驚かされました。個人的には題名ほど「スイッチ」がフォーカスされていないことと、最後のエピローグが少し長いかな・・・と感じましたが、全体感としてはすごく楽しめた作品でした!2023/02/12