出版社内容情報
堀江 敏幸[ホリエ トシユキ]
著・文・その他
内容説明
デビュー作となったユルスナール論に始まる十数年の思索の軌跡。須賀敦子、長谷川四郎、島尾敏雄、山川方夫…「言葉と言葉、他者と他者とのあいだをすり抜けていくか細い線への、つまり本質に触れそうで触れない漸近線への憧憬を失わない書き手」として私淑する十二名の作家の物語。
目次
1(書かれる手―マルグリット・ユルスナール論;幻視された横道―須賀敦子『ユルスナールの靴』をめぐって ほか)
2(脱走という方途―長谷川四郎論;気鬱の子午線―島尾敏雄論 ほか)
3(濃密な淡彩―パトリック・モディアノ論のための覚え書き;芝生の意味するもの―ミラン・クンデラをめぐって ほか)
4(“形而上的な怪我”からの治癒―金井美恵子『ピクニック、その他の短篇』をめぐって;肉球的エクリチュール―金井美恵子『恋愛太平記』をめぐって)
著者等紹介
堀江敏幸[ホリエトシユキ]
1964.1.3~。作家。岐阜県生まれ。1999年『おぱらばん』で三島由紀夫賞、2001年「熊の敷石」で芥川龍之介賞、2003年「スタンス・ドット」で川端康成文学賞、2004年同作収録の『雪沼とその周辺』で谷崎潤一郎賞、木山捷平文学賞、2006年『河岸忘日抄』、2010年『正弦曲線』で読売文学賞、2012年『なずな』で伊藤整文学賞、2016年『その姿の消し方』で野間文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ソングライン
17
作品に込められた作家の想いを深く思索しその一部を引用しつつ、その評論自体が一つの文学作品のような私淑する12人の作家を描く評論集です。表題作書かれる手ユルスナール論は作者の知識、難解な言葉と論理にたじろぎますが、読みすすむと共感する作家にであうことが出来ます。人間の元祖は一人ではない、二人きりというのが人間の最小単位で故郷なのだと言い放つ、二人きりの孤独山川方夫論にハッとします。山川方夫「夏の葬列」読んでみます。2023/03/03
十文字
0
デビュー作であるユルスナール論を含む、著者が私淑する作家論。 長谷川四郎を読み直したくなった。2023/07/04
i-CHIHIRO
0
お気に入りレベル★★★★☆2022/11/25
佐藤
0
「竹西寛子論」素晴らしさにうっとりした。親和/違和の均衡を何とか保とうする批評の表面張力は『河岸忘日抄』における「ためらうことのエロス」だとか「吹っ切れる」ということに対する抑制の称揚というテーマへ確実に滴り伝っている。2022/10/06