出版社内容情報
木村 敏[キムラ ビン]
著・文・その他
内容説明
臨床の場に身を置きつづけながら、綺羅星のような著作を遺した稀代の精神病理学者・木村敏。著者の名を世に広く知らしめるとともに、社会精神医学的な雰囲気を濃く帯びていることで、ひときわ異彩を放つ不朽の名著。「異常」とされた人のうちではなにが生じているのか、社会はいかにして「異常」を生み出すのか?渡辺哲夫氏による渾身の解説を収録!
目次
1 現代と異常
2 異常の意味
3 常識の意味
4 常識の病理としての精神分裂病
5 ブランケンブルクの症例アンネ
6 妄想における常識の解体
7 常識的日常世界の「世界公式」
8 精神分裂病者の論理構造
9 合理性の根拠
10 異常の根源
著者等紹介
木村敏[キムラビン]
1931‐2021年。京都大学医学部卒業。京都大学名誉教授。専門は精神病理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ナマアタタカイカタタタキキ
23
私達は規範化された常識的合理性を共通認識として持ちつつ、本来は偶然性・非合理性に満ちている自然の中で生きている。そして、そこから逸脱した人やものを“異常”として認識する。さらに、合理的に処理し得ない“異常”を、1=1ではなく0や∞でありうる世界について言及している。私は、私が認識しうる世界のみが全てではないことは承知している。そして、それが全てだと思い込むことこそ、精神異常への入口とも感じる。“異常”という言葉にはどうしてもネガティブな印象がつきまとうが、決してそれは劣性のみを→2025/03/24
あ げ こ
12
〈…しかし、しょせん罪あるものならば、みずからの罪を冷徹に見透してみずからを断罪するほうがいさぎよいのではないか。虚構は、それがいかに避けられぬものであるとはいえ、虚構として暴露されなくてはならないのではないか。〉何に惹かれるかと言えばその批評性、他でもないみずからに対する批評性と言うものに、何よりも惹かれる。自己批評としてのそれ。明らかにして行くこと。不都合さを、矛盾を。「異常」を「異常」たらしめる仕組みの姿形を。解きほぐして行くこと。あわいの不確かさの内に、異常の内にあるひとたちの言葉を聞くことから。2022/08/24
ふるい
11
異常とは何か、どのように定義され、排除されるのか。精神分裂症(現在の呼称は統合失調症)患者の症例を元に「異常」とされる人々を分析し、常識と合理性に拠って立つ社会の欺瞞を暴く。2022/09/05
shimashimaon
7
「「不可解」とする常識の立場を捨てて、患者が立っているその同じ場所に自分自身をおき移してみなくてはならない」。こうして語られる症例の患者の言葉には本当に胸が締め付けられる。そして患者にとっては恐怖でしかない事態を言葉にあらわすことがいかに困難であったかと理解し寄り添う。異常は正常の対概念ではなく正常の側に立って排除される原理だ。「1=1」の世界に向かう途中で「生への意志」を歪に制約することしかできなかった家庭環境という異常の根源を暴く。私自身の「生への意志」(或は阿頼耶識)の声を大事に聴かなければと思う。2023/03/13
パン
4
1=♾だと信じたい!2023/04/14