出版社内容情報
『ルドルフとイッパイアッテナ』シリーズでおなじみ斉藤洋が贈る、「翔の四季」シリーズの第二作。少年・翔の四季を通して描かれる目に見えるものと目に見えないもの、見えるものと聞こえるものの交差点。
翔の家の近くで、明け方に火事が起こった。しかしそれは、犯人がつかまらないまま不審火として処理されてしまう。
同じ時期に、同級生が学校に持ってきていたレアカードがなくなる事件が起こる。その犯人は意外な人で……。
翔は、「目に見えるものだけが真実とはかぎらない」ことを知り、明け方の火事に思いをめぐらせる。
内容説明
小学生の翔は、あるとき、スポーツカーを見たあとで、その音が何十秒かずれてきこえることに気がつく。近所で起きた不審火、学校でのレアカード盗難事件…。翔は、友だちの涼とともに、「世界は見えたままでも、きこえたままでもない」可能性について、思いをめぐらせるようになる。
著者等紹介
斉藤洋[サイトウヒロシ]
東京都生まれ。中央大学大学院文学研究科修了。『ルドルフとイッパイアッテナ』で講談社児童文学新人賞、『ルドルフともだちひとりだち』で野間児童文芸新人賞、『ルドルフとスノーホワイト』で野間児童文芸賞を受賞。1991年、路傍の石幼少年文学賞を受賞
いとうあつき[イトウアツキ]
1990年生まれ。文教大学教育学部卒業後、保育士としての勤務を経て、2016年よりフリーランスのイラストレーターとして活動(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Roko
28
世界で起こっていることは、見えたままじゃないし、聞こえたままでもない。同じことを体験しても、それをどう感じるのかは人によって違う。自分は黒と思っても別の人にとっては白かもしれない。そういうことを6年生で気づける翔と涼は、物事をよく考えている子たちなのでしょうね。先生だろうが、親だろうが、友達だろうが、自分と全く同じ価値観の人なんていないのだから、それを無理やり同じにしようとするのではなく、「人それぞれ」って理解するのって、とても大事なことなんだなって思うのです。2023/11/17
杏子
16
翔の四季、続編で秋。黒と白のあいだで、ってそういうこと。「正しさ」も人によってはいろいろだ、ということ。なかなか深い物語で、主人公は小学生だけど、ちょっと難しい。少なくとも私の勤務校の児童はまず手に取らないのでは?物音がずれて聞こえてくる、ということに気づいた主人公が、それはなぜなのか?追及することもなく、ただの現象として受け止めていること、斉藤さんらしい話だと思った。私は好きだけれどね!冬、春の刊行が待たれるところ!楽しみ!2022/10/29
lovemys
9
この話はどうだろうか。テーマになっているように、人により正義は違うから、私はこれを読んでモヤモヤしました。このモヤモヤを起こすことが目的なのかもしれないとも思ったり。色々と違和感がある物語だった。2022/10/29
ぱせり
8
見えたまま、きこえたままじゃないなら、正義ってなんだろう。翔の目線でゆっくりと進む物語は、途中で、さまざまな問いを読者に投げかける。答えは一通りではないから、考える。前回同様、まるで端役のように登場する動物が大きな役割を果たしている。偏った正義を責めることもせず、もくもくと生きる小さき者たちの代表のよう。2023/11/12
遠い日
7
「翔の四季」シリーズ。秋編。俄然おもしろくなってきた。タイトルにびしっと沿うテーマがストレートに伝わってくる。翔の変わった能力が明かされ、それがある事件の解決に繋がっていく。音と聞こえるタイミングのずれ。そして、わたしたちが自分にとっての正義(正しさ)をどう位置付けるか?押し付けであってはならない。なかなか難しい判断を迫られるが、正義の名の下に後出しジャンケンのような批難をすべきではないという父親のことばは厳しくも正鵠を射るものであると感じました。2022/11/20




