出版社内容情報
今村 夏子[イマムラ ナツコ]
著・文・その他
内容説明
大将とぼっちゃんが切り盛りする中華料理店とんこつで働き始めた「わたし」。「いらっしゃいませ」を言えるようになり、居場所を見つけたはずだった。あの女が新たに雇われるまでは―(「とんこつQ&A」)。姉の同級生には、とんでもない嘘つき少年がいた。父いわく、そういう奴はそのうち消えていなくなってしまうらしいが…(「嘘の道」)。人間の取り返しのつかない刹那を描いた4篇を収録。待望の最新作品集!
著者等紹介
今村夏子[イマムラナツコ]
1980年、広島県生まれ。2010年「あたらしい娘」で第26回太宰治賞を受賞しデビュー。「こちらあみ子」と改題し、同作と新作中編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で2011年に第24回三島由紀夫賞を受賞。2017年『あひる』で第5回河合隼雄物語賞、『星の子』で第39回野間文芸新人賞、2019年「むらさきのスカートの女」で第161回芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
544
今村 夏子は新作中心に読んでいる作家です。 著者らしい風変わりな短編集、オススメは、表題作『とんこつQ&A』&『良夫婦』です。 「敦煌(とんこう)」は、傍目から見たら家族経営の街中華なんでしょうね(笑) https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=00003672862022/08/13
しんごろ
541
ザワザワ、モヤモヤがクセになる今村夏子ワールド。今作も健在ですな。今回もありえない話もあるんだけど、この世界観いいわ。表題作以外は、現実にありえそうでありえない物語の展開なんだけど、ラストに現実にありそうなオチにハッとする。いやドキッとする。心を突っついてくるね。ちょっとした些細なことをかいつまんで話にもってくるんだから、すごいよね。表題作を抜かして、実際にこんなことありえるなと思う四編の短編集。でも表題作がユーモアも加わって面白かった。これぞ今村夏子ワールド。確かにどの話もQ&Aだと思う。2022/08/12
馨
531
短編集。表題作、タイトルからは何の話かわからず読んだら面白かったです。自分の新人時代のとろくささを棚に上げ、後に来た新人のとろくささを批判したり可愛がられているのを良く思わないことはあるある。『嘘の道』は怖かったです。子供の頃にやらかしたことが他人に影響を与えてしまったことで、自分のせいだと言えないまま年月が過ぎて心のわだかまりはいつまでも残ったまま生きていくことになる。わかる。『良夫婦』も似た感じ。人間の、極悪ではない悪質な面をよくある日常から切り取るのが巧いなぁと思います。2022/10/01
zero1
467
異才・今村は他の作家が描かない方法で人の不安を表現。だから読者は心中がザワザワする。【自分には関係無い】と一時は思っても心の中に残り【実は自分も…】と考え直す。表題作は「あひる」を連想した。自分は【誰かの代わり】なのか。「嘘の道」は【消える】怖さ。「良夫婦」は繰り返す誤魔化しを。「冷たい大根の煮物」は人の懐に忍び込むことを描く。📕最初のうちは【今村の毒は弱くなった?】と感じたが、後からジワジワくるだけで本質に変化無し。暫くは彼女が書きたいようにしたらいい。【誰にも似てない作家】今村の本領発揮はこれから。2023/02/14
mae.dat
377
狂気の短編4話。タイムラインに本書が流れる度に『とんこつQ&A』ってなんだ?って、気になり遂に手にしました。1話目の表題作、斜め上過ぎました。最初はとんこつじゃなくて、ポンコツかよとか思いましたけど、ドンドン嵌りましてね。確かにまごうことなき『とんこつQ&A』でした。面白すぎて何度も吹き出して仕舞い、家族に不審がられて仕舞いましたよꉂꉂ(ᵔᗜᵔ*)ァ,、'`。これさ、今村さんの著作と思っていたのだけど、最後は主人公の今川さんの著作になって仕舞いましたね。こんな世界を創作するなぁ( ¨̮ )。2022/12/26