出版社内容情報
遠田 潤子[トオダ ジュンコ]
著・文・その他
内容説明
しがない日本画家の竹井清秀は、妻子を同時に喪ってから生きた人間を描けず、「死体画家」と揶揄されていた。ある晩、急な電話に駆けつけると、長らく絶縁したままの天才料理人の父、康則の遺体があり、全裸で震える少女、蓮子がいた。十一年にわたり父が密かに匿っていたのだ。激しい嫌悪を覚える一方で、どうしようもなく蓮子に惹かれていく。『銀花の蔵』『雪の鉄樹』『オブリヴィオン』の著者が放つ、人間の業の極限に挑んだ、衝撃の問題作。
著者等紹介
遠田潤子[トオダジュンコ]
2009年『月桃夜』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。12年『アンチェルの蝶』で大藪春彦賞候補。16年『雪の鉄樹』で本の雑誌増刊『おすすめ文庫王国2017』第1位、17年『冬雷』で「本の雑誌 2017年上半期エンターテインメント・ベスト10」第2位、未来屋小説大賞。『オブリヴィオン』で「本の雑誌 2017年度ノンジャンルのベスト10」第1位。18年『冬雷』で日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門候補。20年、『銀花の蔵』が直木賞の候補作に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
298
遠田 潤子は、新作中心に読んでいる作家です。本書は、凄まじい愛憎と狂気の物語でした。本年のBEST20候補です。命 を代償に描いた渾身の作品『人でなし』を実際に観てみたい。 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=00003615682022/06/29
パトラッシュ
225
乱歩の「人でなしの恋」のオマージュとして展開する。父は料理、息子は絵画と己の芸術の道を極めるため、共に愛した女を理想の美に育てようとして失敗し先立たれたトラウマを抱えている。再び理想を求めた父は少女の拉致監禁という人倫に外れた道を選んでしまい、憎み合いながら父の血を受け継いだと自覚する息子も同じ道を進む。しかし被害者のはずの少女蓮子は父子の呪われた血を養分とし、豪華絢爛な花を満開に咲き誇る桜へと変身を遂げる。それは紛れもない人でなしの美であり、小市民の常識など入る隙間のない天才が生んだ最高傑作だったのだ。2022/05/13
いつでも母さん
205
『圧巻。ついに。』の帯。まさしく『ついに。』ここまで来ちゃったか!の感じだった。遠田ワールドの哀しい世界が大好きな私だが、この父子に反吐が出る。芸術ならいいのか?許されると思うなよ!が正直なところだ。狂気と書いて人でなしと読ませるのだな。哀しいはずの蓮子にさえ、ラスト一行をもってしても共感など出来ず・・なのに遺作『人でなし』を観てみたいと思う私も人でなしか。2022/04/21
のぶ
166
登場人物の全員が気持ちの悪い変人ぞろいの作品だった。主人公の竹井清秀は、日本画家で妻子を同時に喪ってから荒んだ仕事しかしていない三流画家。ある日、電話が入り駆けつけると、長らく絶縁したままの料理人の父、康則の遺体があり、傍らに蓮子という少女がいた。康則は十一年にわたり蓮子を監禁していたのだった。清秀は蓮子を保護するが、一緒に暮らすうちに、恋愛感情が芽生え蓮子に惹かれていくのだった。他にも様々な人物が描かれているが、全体を通し不気味な世界が支配し、誰ひとり幸せじゃない物語。好みが分かれる一冊だろう。2022/04/11
モルク
160
末期ガンの日本画家竹井清秀は絶縁中の天才料理人である父の秘書からの呼び出しで行ってみると、そこには父の死体とその傍らには8才で行方不明となり11年間父が監禁していた少女がいた。父亡き後清秀に依存する少女、そして清秀もその少女に固執していく。死ぬ前に少女を描きたい…と彼女を連れて逃避行。命の限を尽くした絵画の数々は文章だけでも眼に浮かぶ。後味は決してよくないのに、それと知りながらやっぱり手に取ってしまう遠田作品。あぁ嫌だ!と思いながらも、その読ませる力は半端ない。2022/07/02
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