出版社内容情報
グレゴリー・ケズナジャット[グレゴリー・ケズナジャット]
著・文・その他
内容説明
日本と世界の狭間で生まれた中篇二作。外国から京都に来た青年の日常や、周囲の扱い方に対する違和感、その中で生きる不安や葛藤等を、「きみ」という二人称を用いた独特の文章で内省的に描く。京都文学賞受賞作(「鴨川ランナー」)。福井の英会話教室を突如やめる羽目になった主人公は、ある日同僚の紹介で結婚式の牧師役のバイトを紹介されるが…(「異言」)。第二回京都文学賞満票で受賞。日本語を母語としない著者が紡ぐ、新しい感性による越境文学。
著者等紹介
ケズナジャット,グレゴリー[ケズナジャット,グレゴリー] [Khezrnejat,Gregory]
1984年、アメリカ合衆国生まれ。2007年、クレムソン大学を卒業ののち、同志社大学に留学。2017年、同志社大学大学院文学研究科国文学専攻博士後期修了。現在は法政大学のグローバル教養学部にて准教授。2021年、表題作「鴨川ランナー」にて第2回京都文学賞を満場一致で受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
249
2021年に京都文学賞を受賞した、もちろん京都を舞台とする表題作と、福井(とちょっぴり神戸)を舞台にして、タイトル「異言」の意味を知ることができる、短編2作。文字すら異なる異国で外人が持つ不安感·高揚感や、在日欧米人に日本人が期待する役割との心の葛藤などが、言語化されていて、非常に興味深く読むことができました。日本には本当の意味でのダイバーシティって根付くのかな? そんなことを考えさせられる良書です。鴨川の遊歩道を走る気持ち良さも伝わってきます。2022/05/14
ケンイチミズバ
110
文体の瑞々しさ若々しさに好感がもてる。京都の季節感がハダ感覚というのだろうか、体感できるほどの日本語力だ。君の気持ちがすごく理解できる。外国人に対する日本人の会話は確かにおかしい。人として扱ってもらえないと感じるほどに不自然で、どうせなら日本語で話しかけて普通に会話をして欲しい。頷いてしまう。疎外感から外国人とばかりで集まり飲み、会話してしまう君。言語の魅力に導かれ来日した君を通じて私にも見えた日本の期待外れが新鮮でリアルです。結婚式場で牧師を演じる外国人の複雑な気持ちも理解できる「異言」も笑うしかなく。2022/06/20
アキ
101
第二回京都文学賞受賞作「鴨川ランナー」が良かった。主人公は著者自身。高校生の頃、京都を訪れ橋の中央で川を眺める。大学を卒業後、英語教師として京都近郊で働く。住んでみると外国人に京都の街は冷たく、東京の私立大学に就職が決まる。出張で京都を再訪する。あの頃と同様鴨川をランニングする。四条、三条、二条、出町柳、葵橋、目の前の百mに集中して京都の町と一体になる。学生に留学の相談をされてわが身を省みる。海外留学の「価値」とは。現実は複雑でちぐはぐなものであった。「異言」英会話教室の倒産で生徒の女性と同棲を始める話。2022/02/18
ケイ
96
鴨川をランニングする予定の前夜に偶然見つけたので読んでみた。日本にいる自分を客観的に「きみ」とよぶ書き手。さて、感想をと言えば…、何となくふーんそうなのか、と読んでいたのだが、最後のシーンがなんとも生々しくて嫌悪感を覚えてしまって、感想をギブアップ。2022/10/03
いっち
61
英語圏で生まれ育った主人公。16歳で初めて京都を訪れる。また来たいと思い、日本語を勉強。大学卒業後、京都で英語を教える。日本語を話せても、英語で話しかけてくる日本人に、侮辱された気持ちになったが、いつしかどうでもよくなった。英語指導する外国人たちの輪を離れ、谷崎潤一郎を読むようになった。谷崎が住んでいた場所を訪れ、教授と出会い、大学院で学ぶようになる。その後大学教員になった。すべて最初に京都に来たのがきっかけ。主人公は鴨川付近を走る。「早まるな。ペースを維持すること。目の前にある百メートルに集中すること」2023/02/02